背広のボタンが物語る

f0227716_15233544.jpg

ジャケットの前ボタンを外して、ふわりとネクタイが風にたなびくオフィス街の風景は、映画の中でもよく見られる。馳走が運ばれるテーブルに就いて、さり気なくボタンに手を掛けて外すこともある。

いずれも男が、ちょっとリラックスした気分を表す洒落た仕草であり、ご婦人が着用されるジャケットのボタンより意義深いものなのである。本質的にボタンはきちんと留めねばならぬが、そういう所作は着こなし術の一つとして良い。

シングル仕立てのジャケットに備わる前立てボタンは、おおよそ2個か3個。ボタンの数よりも、その使い方に注目してみよう。元は詰め襟だったジャケットは、胸元を折り返して現在の菱衿になった。古くは第一ボタンだけを返したので4ボタンとなり、徐々に胸元を広くするようになって2ボタンへ変化してきたものだ。

同時にジャケットの裾も左右へ広がるカーブを象るようになり、これをカット・ア・ウェイと呼んだ。馬にまたがるとき、自然な姿勢がとれるよう考案されたものである。

さて、伊達男が用心しなくてはならないのは、カットされた前立ての位置にある一番下のボタンで、これを留めると左右にシワが生まれてしまう。付属品だけれども、このボタンは「捨てボタン」として着用時には使わない飾り物。

当たり前のように備わるジャケットのボタンは、服飾のキャリアとセンス、そして男の気分まで物語ってしまうのだねえ。

絵と文・ふじたのぶお
[PR]

by foujitas | 2007-04-06 15:23 | 洒落日記  

<< 街角の粋なスケッチ 上着を手にする身だしなみ >>