ズボンと呼んで何が悪い

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戦後、アメリカの文化が大量に流入した日本では、服飾にかかわる言葉が乱舞している。明治のころから時間をかけて培った洋服文化の親しみ深い言葉が、流行にはやされて何か古臭く聞こえるようになったのである。

たとえばズボンと呼んだ衣服は、後にスラックスと言われ、昨今ではパンツと呼んで定着してきたが、玄人の中にはトラウザースなんていう舌をかみそうな名前で呼ぶ向きもある。少しだけ紐解いてみよう。

洋服が来日した当時、フランス語のデュポンが訛ってズボン。アイビーブームの時代には、ドレッシーな羊毛素材をスラックスと呼んで、カジュアルな綿素材なら綿パンと言った。それは後に格好良くチノパンとして親しまれ、ファッション雑誌に飛び交った。トラウザースは英国で広く呼ばれる名称である。

ところでチノパンの「チノ」は綿の綾織り生地を指すもので、第一次世界大戦の当時、英国軍が中国で織らせた丈夫な布地、チャイナクロスのこと。

さて、洋服屋へ立ち寄って品定めをすると、店員が近寄ってきて声をかけられることがある。そこで「おズボンをお探しですか」と尋ねられる場合と「パンツを・・・」では、なんだかこちらを値踏みされたようで気分がよろしくない。どう呼んだってモノに違いはないのだがね。だからお店に入ったら言ってやろう、「チノクロスのズボンを見せてくれんか」と。ズボンと言って、はっは、素人扱いされてはたまらん。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-05-04 15:33 | 洒落日記  

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