麻のピンキリ

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夏と聞けば麻(あさ)を思い出す。コットンに比べてシャリ感があり、古今東西、夏の衣服に親しまれていた素材である。麻のシワを着こなしたら一人前の伊達男、などと昔のファッション指南は説いていた。

さて一口にいう麻だけれども、その実は原料になる植物によってピンからキリまで細分化されるべきものだ。

大量に出回っている麻素材の原料は、ほとんどが熱帯地域で栽培される苧麻(ちょま)であり、珈琲豆を収納するドンゴロスのように荒くて毛羽立ったもの。収穫は豊かで安価。昔は織布に不向きとされていた。総称して「ラミー」と呼ぶ。

一方で「亜麻色の髪」と代言される亜麻こそ、本来、衣服に珍重された植物。アイルランドなど北欧の気候で栽培される繊維は「リネン」と呼ばれ、極めて細く、絹糸のように均一な長繊維をとりだすことができる。耐染色性に富み、吸水性はコットンの約5倍。衣料品だけでなく、一流ホテルのテーブルウェアにも利用された。古い記録によると、明治の時代には現在の周東町の界隈でも栽培していたという。

現代では純粋なリネン製品は極めて貴重な物だ。その生産量はカシミアを凌ぐ希少性となり、極細糸の服地を扱う縫製工場もなくなってしまったのが実情である。

麻と称するリネンとラミー。それは牛肉と豚肉を一括して肉と呼ぶに等しく、本来はきちんと使い分けていた素材なのだった。今年の夏は麻を楽しんでみるとするかねえ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-06-01 13:26 | 洒落日記  

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