服装の演出力

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「仰げば尊し」とは卒業式の伝統的な唱歌だ。昨今ではポップス、歌謡曲などが好まれる一方で、やはり根強く各地で歌い継がれているという。現代っ子のライフスタイルには縁遠い歌詞にはちがいないけれども、厳粛な式典である貴い一日には相応しい歌といえるのだろう。

もはや遠い記憶の彼方に追いやってしまった卒業の日をたぐり寄せると、昨日まで親子か兄弟のように接していた先生方が、この日ばかりは違って見えたことに気づいた。

日頃はトレーニングウェアで竹刀を振り回していた先生も、白衣に身を包み寡黙にペンを走らせていた先生も、みな一様にダークスーツを着用し、学徒である我々とは一線を画すように講堂の上座へ並び、だれもが温かく見守るような目で立ち尽くしているのである。「ああ、この人たちは大人なんだ」と、子どもたちは哀れにもそこで思い知るのだった。

おりしも卒業式の刹那。学徒は自らの人生に小さな節目を感じ、はじめて感謝を思い起こし、清々しい気持ちになって式典を辞する。

服装が醸しだす演出力は大きい。いくら饒舌にしゃべっても、崩れてしまった着こなしでは相手に与える印象も相応のものでしかない。如才なく立ち振る舞うためには、良い服を正しく着こなすことが不可欠なのである。

それにしても苦労と感動の起伏が大きいものだねえ、先生と呼ばれる職分は。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-03-21 16:11 | 洒落日記  

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