コットンスーツ

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夏のスーツの服地といえば、一般的にサマーウールと呼ばれる「トロピカル・ウーステッド」が多い。やや強く撚られた糸を平織りにした、軽くてシャリ感のある肌触りが特徴だ。薄い芯地とあわせて仕立てられたスーツは通気性が良く、日本の夏に最適な生地にちがいない。

さて、話は一九六〇年代。ときのアイビーブームの最中、とある出版社から一冊の写真集が発売された。「テイクアイビー」と題して上製本がなされた書籍は、たちまち若者たちのバイブルとして書店で、また話題のメンズショップで飛ぶように売れたのである。

硬い表紙を開いてみると、当時のアメリカ東部の大学の風景や暮らしぶり、またニューヨークやワシントンのオフィス街のスナップ写真が満載されている。憧れていたアイビールックの、すなわち本場の姿が克明に掲載されているのだった。現代のようにウェブやテレビなど即時性の高いメディアが乏しかった時代、わずかな本から情報をかきあつめ、みな一喜一憂していたのだねえ。

写真集の中程に、明るい色合いの見慣れぬスーツを着た中年紳士の姿が捉えられている。ポプリンクロスと呼ぶ綿素材で仕立てたスーツは、唯一、ウール以外の夏用服地であり、誰もが憧れた垂涎の一着。つい先日、お店の前を歩くオジサマの生成り色のコットンスーツを見て、ふと思い出した「テイクアイビー」だった。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-05-23 15:11 | 洒落日記  

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