洋服屋の理性

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雑誌アエラを読んでいて、高村薫さんによる興味深いコラムに、ふと気づかされた事があった。先の洞爺湖サミットを「生存を脅かす危機への直感と理性が人間を急いで別の生き方へと招いているのである」と女史は説く。地球温暖化に対する一つの見識であり、野放図に発達してきた人類の転機を描写するくだりだ。

原油の高騰が引きがねとなって、巷ではあらゆる物品の値上げが加速して止まない。消費意欲はひどく萎縮してしまい、市場は深刻な不景気風に吹かれ、「余計なモノは買わんよ」と誰もが思い始めたワケだ。

アイビーとかトラディショナルと呼ばれるジャンルの洋服は、古今東西、流行が無くて長く着られる事が美徳だった。ところがバブル景気に沸いた時代、その余りにも保守的なデザインが面白味を欠くといって、いつの間にか流行を意識した造作が歓迎されるようになった。今になって思うと、それは決して消費者からのニーズではなく、むしろ服を拵えるサプライヤーの「売りたい一心」ではなかったか。すべからく物事は、内側から見えぬ事が傍目にはわかるのだねえ。

美徳をかなぐり捨てて流行に走った保守的ファッションなんて良いはずがない。メイカーと一緒になって品揃えを陳腐化させたことを猛省し、今一度、長く着られる洋服を見つめ直したいと思うのだった。あたり前の事をあたり前に勤しむための直感と理性。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-07-25 18:27 | 洒落日記  

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