コットン信望

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左腕の手袋による鮮やかな日焼け跡を見やって「ゴルフか」と商店街の先輩。「いいえ、こっちちですわ」竿に見立てた右手をかざして答える。なあに、毎週水曜日に欠かさない山陰の磯釣りである。

背後は岩の壁。眼前は荒海。それ以外なにも無い自然の中だ。強がってみても夏が本格化すると酷く暑い。日差しは我慢するが、フロートベストと呼ぶ発砲ウレタンが敷きこまれた多機能ベストを着用するせいで、その発汗量たるや凄まじい。

大量の汗をかくアスリートたちは、スポーツ用品メイカーらが開発した多様な新素材を身につけ、身体能力を存分に発揮させているらしい。サッカーや野球の選手が着ている、一見するとメッシュのような素材が羨ましく映る。それらの性能は「機能素材」といって、昨今ではファッション衣料にも応用されるようになった。通気性の高いスーツなど、夏を快適に格好良く過ごすための妙案ではないか。

スポーツ感覚で捉える釣り業界にも、同じようなコンセプトの衣料品がある。しかし「夏はコットン」という呪縛にも似た古風な思いが先に立ち、店先で何度も手を伸ばしてみては逡巡(しゅんじゅん)するばかり。いまだに使った経験が無いのだねえ。

しかして今週も、純綿カノコ編みのヘンリーネックシャツ。半袖丈をさらに短く縫い直した、コットン信望者の特製シャツで過ごす魚釣りの一日。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-08-01 16:17 | 洒落日記  

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