ある紳士との会話

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流通の仕組みに則ると、一つの製品が必ずしも意図されたとおりに扱われているとは限らないのである。先頃、クレリックカラーのシャツにニットタイをスマートに結んだ四十前の青年紳士が、ふらりと洋服屋へ立ち寄られた。緑色の洒落たジャケットに袖を通しながら「ボクはこの三釦段返り型が好きなんですよ」と如才なく、服飾の趣や昔話し、愉快な失敗談に花が咲いた。そこである考えが浮かんだ。

思うに、素材を選びデザインを決める作り手には、良い服を造ろうとする心意気がある。それを使う消費者は、着心地や用途に満足を求める。その間に洋服屋が仲介し、経験と勘を働かせて最も相応しい一着を探し出す。さらにクリーニング屋は、大事な洋服を思い出と一緒に美しく保つ技術を提供している訳だ。

これら四者は、しかし流通の過程で刹那的に情報を出するので、うまく意思疎通ができなかったとき困った事態が起きる場合が多い。一着の服に関する様々な立場の考えや感想を共有できたら、きっと洋服はもっと楽しくて幸いな物になる。いきおい洋服屋には断片的な情報が集まる。これらを整理整頓し、解りやすく説くことも大事な店の役割にちがいない。そんなことを思いながら紳士と話しを続けたのだった。

老舗の専門店が残る商店街では駅前新聞の創刊準備が進んでいる。地域の人々が意見交換するコミュニティが誕生するような街になったら良いねえ、市長さん。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-10-24 16:19 | 洒落日記  

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