服地に世相をみる

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空前絶後の衰退景気に包まれたまま、残された今年はあと数日。いつもの年なら活気づく歳末の繁華街だが、街ゆく人々の表情は俄に硬い。ファッションアパレル業界のニュースでもユニクロやH&Mなど低価格に特化したブランドが話題に上った外は、やはり全国的な不振が伝えられた一年だった。

好景気時代には派手な洋服が好まれ、不況になると保守的な洋服が流行するというのは、古今東西変わらぬ傾向らしい。その趣は、いきおい高額な買い物になるスーツやジャケットにも、はっきりと顕れていたようである。

カスタムメイドスーツを仕立てるには、三百種を超える服地の中から好みの生地を選んでいただかねばならない。服地には様々な特徴や価格帯があり、それぞれを「バンチ」と呼ぶ冊子にした生地見本帳によって分類してある。いつもならば、まずこの服地選びに長い時間を要するところが、今年に限ってはやたらと早い。なぜなら珍しい色柄に目をくれることは無く、大半の方が「変わった物は要らんから紺かグレーの良い生地を見せて」と実にシンプルで賢良方正なるご注文をなさるのだねえ。

下品な色柄のスーツが良いとはコレっぽっちも思わぬけれども、せめて服地選びが楽しくなるような世相であって欲しいと願う年の瀬。来る年が一層と明るく豊かでありますよう。今年も一年間のご愛読に深謝。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-12-26 17:41 | 洒落日記  

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