コードバン

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古今東西「本革」と記された製品は数多ある。しかし農耕民族として生業を立ててきた日本では、主に木と布で拵えた道具で暮らしてきたためか、革の質に関する頓着があまり無い。狩猟民族の多くは、食肉の副産物として身近にあった革を巧みに加工する事で、今に伝わる革製品に親しんできたのだろう。たとえば靴や鞄など、革偏がつく漢字のほとんどは舶来品であるところなど、いかにも維新以降に日本へもたらされた物であることが想像できる。

なかんづく牛の皮は革製品の中でも最も多く利用されている。次いで日本では豚、羊などの革が多い。オーストラリアではカンガルーの皮革を加工した衣料や道具が日常的にあるというから、なるほどご当地の特産品とはかくべき物か。

近年、急速に希少性が高まり、価格が高騰する一方で市場から姿を消している革ある。「コードバン」と呼ぶ馬の臀部の革がそれ。欧州の農耕馬から僅かに採取できる革は、製品になったとき表裏を貼り合わせない一層構造なので非常に丈夫で、かつ美しい光沢を長く保つ。ランドセルなど毎日使う道具には相応しい素材だったが、重く手入れが欠かせないことから次第に敬遠されるようになり、いつしか靴や鞄も見られなくなったのだねえ。

いまや店に残されたコードバン素材といったら、ベルトと小銭入れのみ。後の入荷も困難を極める現状。売れて欲しくないが、これもまた商人の定めか。阿々。

絵・文 ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-01-16 18:51 | 洒落日記  

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