トグルボタン

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英英辞典でも開かねば出てこないような単語だろう。「トグル」とは聞き慣れない言葉である。コンピュータ用語には「同一操作で機能を切り替える意」と解釈され、自動車用語では前照灯の切り替えスイッチを指す。これがアパレル用語では、かのダッフルコートのボタンを言う。

毛布のような厚手の羊毛生地でこしらえたダッフルコートは、英国将校が戦地で採用したことから、やはり英国のグローバーオール社のそれが一躍有名になった。後に米東部の大学生たちが好み、アイビーファッションの代表的なアイテムとして名を連ねた。

そのボタンは特徴的で、水牛の角の先端を加工した「ツノボタン」を革ヒモで留めるもの。ほかに同じ仕様の洋服は例がない。これをして角こそトグルボタンであり、ダッフルコートの特徴とする向きがある。

一方で市場には、角ではなく魚釣りに用いる木製のウキを模したボタンを備えた物があった。コートの形は同じ。こうなると、どちらが本物かとする論争が巻き起こる。ダッフルコートのルーツはノルウェイのバイキングに辿る。大西洋を股に掛け、海上生活の中で浮き子をボタンの代用としたという説は、たしかに一理ある。

ダッフルコートの向こうに英国を見るか、はたまた北欧の海賊に思いを馳せるか。トグルボタンとは摩訶不思議な夢をかき立ててくれるねえ。

絵・文 ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-02-20 17:26 | 洒落日記  

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