若者から青年へ

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春になったら高校を卒業し、大阪で就職することが決まったという学生のスーツを見立てた。昨今では、新入社を控えた若者の多くは、友人と示し合わせて量販店へ赴き、テレビで見た歌手が着用するような黒いスーツを購入することが多く、商店街のちっぽけな老舗を訪れるケースは少ない。

その若者は多聞に漏れずジーンズを尻まで下げていたが、採寸をしながらスーツ姿の佇まいを説いた会話に対しては、実に凛とした受け答えをされた。正しいと感じた事は素直に受け容れ、不可解に思った事はきちんと尋ねる。そうして理解を深めながら、服地やデザインを選び、時間をかけて一着のスーツを仕立てたのだった。きけば高校生活では武道を嗜み、自らの意志で就職を決めたという。

おそらく彼は級友と過ごすときなら、どこにでも見られるような若者風にリラックスしているだろう。しかし、これから社会へ出て大人と共に営んでいく強い自覚があったに違いない。一介の洋服屋が彼の前後を知る術はないけれども、まさしく若者から青年へ成長する過程を目の当たりにしたようで、やけに嬉しく思えたのだねえ。

一着のスーツが社会に及ぼす影響は大きい。いや、正しくは、身なりや所作、言動が評価の第一基準にされることは、普遍的な社会のルールである。その気構えを持って社会に出る彼は、大きなアドバンテージを持っている。頑張れ、青年。

絵・文 ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-02-27 17:27 | 洒落日記  

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