長袖のマドラス

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「インド綿」と呼べば通りが良いか。インディアマドラスはインドのマドラス地方で、草木染めによって彩られた木綿糸を単純な平織りにした、とても素朴な風合いの生地。染料は強い原色が多く、真夏のリゾートでもなければ気恥ずかしいところだが、これが経年の洗濯や紫外線に晒されることで、じわりと滲んで薄くなる。使い込むほどに柔らかく幻想的な色柄になるところがマドラスの特徴であり、古くから「マドラスが泣く」と言って洒落者たちは愛でた。

ところが製造物責任法(PL法)が施行されると、なぜか本物のマドラス生地が市場から姿を消した。たまたま流行が裏目に出たのか、あるいは「色が落ちた」とクレームになる事を懸念したのか、今となっては知れぬこと。それから長い間、メンズファッションにインド綿はお呼びがかからなかった。

しかし毎年、夏が近づくと真新しく派手なマドラスのボタンダウンシャツを探すのが楽しみ。数年後の風合いを見抜くのも、ベテランだけがもつ審美眼だ。

メイカーから初夏の品物が入ったケースが届いたワクワクして開封してみると、なんと長袖のマドラスが、しかもオーガニックコットンだと記してある。「こりゃあ珍しい、三十年ぶりかねえ」左様、かつてのアイビーブームの頃、真夏専用と思えた生地で長袖を仕立てていた、VANというメイカーがあった。いや、これは懐かしいねえ。

絵・文 ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-03-20 18:37 | 洒落日記  

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