スプリットヨーク

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ドレスシャツの仕立てに関する事柄。いつも着ているシャツをハンガーへ掛けて後から見ると、背中の上部に横向きの生地が縫い合わせてある。縦縞柄のシャツなら一目瞭然。

日本では「肩はぎ」と呼ぶスプリットヨークは、人間の体の構造に合わせた合理的な仕立てだった。背骨の頂点から左右に伸びる人の肩線は水平ではなく、やや下がっているもの。ひとたび両腕を動かせば、背中の当てた「肩はぎ」は、やはり肩線に沿って引っ張られる。

一方で織られた布は、水平垂直方向の引っ張り強度は高いが、斜めに向かって引くと意外なほど脆い。織り目は菱形にねじれてしまい、形が崩れてしまうのである。ただし、それは織布の技術水準が低かった当時のことで、現代では、細い綿糸を緻密かつ均等に織ることができるので、斜め方向の脆弱性は大きな問題にならなくなった。

スプリットヨークは、そんな時代の智恵として考案されたクラシカルな仕立てである。ところが、実際に縫製の工程を考えると大きな手間がかかり、製造する側に立てば省略したくなるもの。いつの間には忘れ去られた仕立てとなった。

来シーズンの展示会へ赴いたおり、スプリットヨークのシャツを見つけたので、嬉々として営業担当の若い兄さんに尋ねた。すると「ああ、本当だ。そうなんですか」と、まあ、時代は変わっていくのだねえ。南無三。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-09-18 18:38 | 洒落日記  

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