洋服の倫理観

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ゆとり社会を目指して以後、様々な規制緩和が時代の主流となり、あまねく社会で規律や戒律が緩められてしまった。このまま甘い時代が続いたら、日本の資質はどうなってしまうのだろうか。

先週の週央。さるスーツ屋の展示会があって東京へ赴いた。本来は伝統的なスタイルのスーツを提供するメイカーだったが、会場の片隅には、いまどき流行の「短丈スーツ」が飾ってあった。左様、上着の総丈が五センチも短く、パンツはシワが寄るほどスリムな伝ザイン。若者たちが一様に好んでいるスタイルの洋服である。

なんという嘆かわしい事。老舗スーツ屋も軽々しい流行に追従せねばなぬのか。無念に思いつつ展示会を辞して、それからカスタムメイドスーツの提携会社へ足を運び、いましがた見てきたスーツの話しをしたところ、仕立て屋仲間は全員が同情を口にした。そんな中で一人の洋服屋が体験談を語り始めた。

上司に短丈スーツを咎められた若い彼は、「丈が短いだけで何が悪いのか」と抗弁した。するとその中堅企業の社長は自ら彼の前に立ち、「人が不快に思うということはダメなんだ。だからそのスーツは社会では通用しないと知りなさい」と諭した。

社会的な教育を受けていない若い社員はスキルが無い。先達は知らぬ者にきちんと諭してやる責任がある。洋服の倫理観とは、こうして保たれるものなのだねえ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-11-20 13:55 | 洒落日記  

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