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一流のスーツはちょっと

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デフレ時代に突入して、ちまたには似通った品物でも価格に大きな違いが生じた。洋服業界も例外ではなく、一着の背広でも、数千円から数十万円まで見つけることができる。服地や仕立て、あるいはブランド力に応じて値段が異なるのだが、いずれも背広としての機能は果たすのである。

買い物は安いほうが嬉しい場合が多いけれども、なぜ高い背広が存在しているのだろうか。

古今東西、それは自負心の表れに他ならない。大人が着るスーツは、若者が芸能人のマネをしてバイト代をつぎ込むそれとは、あきらかに一線を画する。社会的な責任や地位を自覚するからこそ、それに相応しい着衣で過ごすことに価値を見いだしているのだ。どちらかと言えば自動車選びに似ている。

かつて「一流のスーツはちょっと、ねえ」とためらっていた団塊世代が、いま「一流のスーツは、ちょっと気になるねえ」と言って、少し大きくなったウェストの周りをなでるのだった。本当に良いスーツは、他人の価値観で着るべからず。

絵と分・ふじたのぶお
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by foujitas | 2006-09-30 18:13 | 洒落日記  

パンツの裾の折り返し

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「裾はどのように?」と、パンツを仕立てられるとき必ず尋ねる一節に「ダブルにしてね」と答える洒落者たち。

ダブルとシングルを選択する基準は、スーツの歴史をさかのぼれば見えてくる。

室内着として誕生したスーツの裾は本来、シングル仕立てが正しいものだった。やがて男たちは屋外で短靴を履いてスーツを着るようになり、靴に砂が入ることが煩わしく、裾を折り返してダブル仕立てで着用するようになった。だからスポーティな着こなしにはダブルで、ドレッシーなときにはシングルで着るのが正しいといえる。裾を三つ折りで縫いつけたチノパンのスタイルは、ジーンズにも見られる最もラフなデザインだ。

しかし英国エドワーディアンが愛したカントリースタイルから学んだ、アメリカのアイビーファッションでは、パンツの裾をダブルカフスにして仕立てた。ビジネススーツやチノパンの裾を折り返して着ることが、洒落者の粋だった。

趣向や用途、生い立ちなどを併せてみれば、パンツの裾もまた一考。ダブルカフスのパンツが増えてきた昨今に、キレイ系ファッションの再来を感じるのである。

絵と分・ふじたのぶお
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by foujitas | 2006-09-23 18:12 | 洒落日記  

ボタンが語る大人のスーツ(後編)

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ジャケットのボタンに一喜一憂する男たちがいる。

メンズファッションの流行は女性にくらべると変化が少なく、衿幅やボタンが少し変わる程度でしかない。お洒落に敏感な女性から見れば面容なこだわりかも知れないが、ボタンは限られたルールの中で自己主張ができる、背広のデザイン要素のひとつなのだ。

近年、ちょっとした回帰ブームが見られる。かつては信念をもってアイビーファッションに身を包み、真夜中の国道をクーペで駆っていた洒落者たちが、やがて良き家庭人として過ごし、気に留めなくなっていた自分の洋服に、またこだわりを持ち始めた。それは子育てを終えた女性が、淑女として再び輝きを取り戻すと同じ心境にちがいない。

男たちは「3ボタン段返り」と呼ぶスタイルをこよなく愛していた。トップボタンは衿の返りの裏へ隠れて見えないが、対するボタンホールは存在する。こんな小さな仕様が男の美学なのである。

せっかく仕立てるなら、もう一度あのジャケットを着てみよう。そう考えるオヤジ世代の粋が、今またメンズファッションを面白くしている。

絵と分・ふじたのぶお
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by foujitas | 2006-09-02 18:01 | 洒落日記