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靴を磨いて男を上げる

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靴は多くの男が興味を抱く服飾品である。とりわけ上質な革靴は、適度な重量感と繊細な造り込みがなされ、足を入れると匠の技にワクワクと胸が躍りだす。厚くきめ細かい革を縫い合わせ、美しく整えられた靴の見栄えはとても優雅なものだ。ファッション雑誌を開きみれば、モデルの足を包む一足が何万円という高価な靴に、小さなため息をついてしまうのだねえ。

さて、そんな靴の何が素晴らしいのだろうか。ブランド、革質や縫製、履き心地。だから「良い靴は高い」とは、さにあらず。

男が嗜む靴というものは、しっかり手入れが行きとどいてこそ真価を発揮する。いくら高級な舶来品であっても、煤けてしまったり、傷だらけでは台無し。さらに、ただ靴墨を塗りたくるだけの手入れは、どんな革でも硬く変質し、やがてヒビ割れてしまうという事実は意外と知られていない。

動物の皮革である革は薬剤によって「なめし加工」がなされる。当然ながら革組織の新陳代謝は起こらない。靴として使用を始めると革が含んでいる脂分や水分が失われ、乾燥状態に陥るのだ。

人間の肌手入れを思い出されよ。口紅や眉墨でメイクアップをするばかりでは、たちまち素肌の潤いが失われてしまう。靴墨を使うその前に、革の保湿成分を整える栄養クリームを忘れてはなりませぬぞ。足元を見られぬよう、くわばら、くわばら。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-04-27 15:29 | 洒落日記  

男のネックの服飾品

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中世の戦にあって、首筋を守るために巻いたスカーフがルーツだという。敵と味方を区分する色が用いられ、後には所属する連隊(レジメント)を示す縞柄が配される。これをレジメンタル・ストライプと呼んだ。

ドレスアップした男が唯一、カラフルな色合いを楽しめるネクタイは、戦いの歴史の中で培われた物だった。

タイの流行はめまぐるしく、その色合いや幅、昨今では素材にも多様な工夫がみられ、実のところ「どれがエエか、よう判らんようのう」と嘆かれる向きが少なくない。ご婦人のスカーフを選ぶようにもゆかず、さりとて決められた法則性も存在しないのである。面妖なる男の服飾品。そのキモに焦点をあててみよう。

アイビーファッションが席巻した時代には、「無地を数本とストライプを」などと諭す教本が多くあった。着こなしを考える上で、たしかに効率的な持ち方だ。使うか否かは別にして、教えに従って取りそろえれば安心できる何かがあった。

しかし現代を眺めてみると、そう易々と済ませられない。英国やイタリアなど各地の趣きが融合する流行は混沌としていて、一筋縄で収められなくなったのだね。

しからば、派手なシャツには地味なネクタイ。派手なジャケットには、地味なシャツとネクタイ。地味なジャケットとシャツなら派手なネクタイ。詰まるところ、やや派手と感じる色柄で一カ所だけ飾るのが今世風。洒落男のささいな主張なのである。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-04-20 15:25 | 洒落日記  

街角の粋なスケッチ

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必ずしも都会的な街ばかりが格好良いとは限らない。地域の風土や文化に根ざして創られた街並みには、現代的な手法でデザインされたビルや道路では語れない懐の深さがある。 岩国の周辺では、いかがだろうか。大手の家電店や銀行が移転した駅前の一角は、美しいタイル舗装がなされた道路とあいまって、ビジネスマンの歩く姿が未来像を思わせる。

旧来の店々が集う商店街のエリアでは、寂れた印象が拭えぬけれども、やはり街の年輪を感じさせるモチーフが少なくない。スタイリストがサイケな格好で歩き、エキゾチックな欧州の自動車が行き交う風景は、もっとも男の粋が映える場所だ。

歴史を垣間見るには錦帯橋のエリアが相応しい。家族連れがカジュアルな出で立ちで過ごし、団塊世代が午後の散歩に興じる風景は、とてもリラックスした空気を醸し出す。春先の今なら、明るく柔らかい色合いが似合う街並みである。川下地区に目を移せば、いまだアメリカの文化を肌で感じることができるだろう。

それぞれの街の顔をファッションセンスにかざしてスケッチしてみると、ユニークで多彩な絵が描ける。古今東西、昔ながらの空間でこそ、男の粋は魅力を増すのではないだろうか。

衣食住は人々が暮らすための軸となる物事だ。いずれが突出してもバランスを失ってしまい、日々のライフスタイルを楽しむことができない。適度な贅沢感を持ち、しかし本来は質素を美徳にする、英国人のようなスタイルが羨ましいねえ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-04-13 15:24 | 洒落日記  

背広のボタンが物語る

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ジャケットの前ボタンを外して、ふわりとネクタイが風にたなびくオフィス街の風景は、映画の中でもよく見られる。馳走が運ばれるテーブルに就いて、さり気なくボタンに手を掛けて外すこともある。

いずれも男が、ちょっとリラックスした気分を表す洒落た仕草であり、ご婦人が着用されるジャケットのボタンより意義深いものなのである。本質的にボタンはきちんと留めねばならぬが、そういう所作は着こなし術の一つとして良い。

シングル仕立てのジャケットに備わる前立てボタンは、おおよそ2個か3個。ボタンの数よりも、その使い方に注目してみよう。元は詰め襟だったジャケットは、胸元を折り返して現在の菱衿になった。古くは第一ボタンだけを返したので4ボタンとなり、徐々に胸元を広くするようになって2ボタンへ変化してきたものだ。

同時にジャケットの裾も左右へ広がるカーブを象るようになり、これをカット・ア・ウェイと呼んだ。馬にまたがるとき、自然な姿勢がとれるよう考案されたものである。

さて、伊達男が用心しなくてはならないのは、カットされた前立ての位置にある一番下のボタンで、これを留めると左右にシワが生まれてしまう。付属品だけれども、このボタンは「捨てボタン」として着用時には使わない飾り物。

当たり前のように備わるジャケットのボタンは、服飾のキャリアとセンス、そして男の気分まで物語ってしまうのだねえ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-04-06 15:23 | 洒落日記