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パステル色の真相

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景気が良ければ明るい気持ちになり、豊かな色彩が流行する。重苦しい気分のときは好む色合いもダークな色調が増える。色の流行と景気は関連があるという。心理学のような真相は知れぬけれども、メンズファッションの近代を振り返ると、たしかに相通じる傾向が見られる。

バブル経済以後、それまで華やかだった男の洋服は一転して黒や紺、またはベージュやカーキーなどまったく味気ない色に埋め尽くされた。デパートやメンズショップは、みな一様に濃くて暗い色を並べた時代だ。

そんな流行色は、しかし実をいうと恣意的に流布された傾向でもある。世界組織であるインターカラー(国際流行色委員会)は実シーズンの2年前に色を選定し、下流にある業界やメディアがなぞらえる。こうして色の傾向が創り出されているのである。

すると景気動向と流行色は、必ずしも相関的な間柄とはいえない。2年も前に好不況が予言できるのなら、もう少しマシな世の中になっているだろうからねえ。

流行色誕生の賛否はさておき、近年、男のカジュアルにきれいな色が戻ってきた。フレッシュなパステル系の若草色やピンクは、ダークな色のパンツやジャケットに一色を加えるだけで、佇まいが穏やかになり、気分も軽くなったように感じるものだ。

時代を担うオジサマがさらりと着こなすパステル色にこそ、洒落の妙が隠されている。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-05-25 17:02 | 洒落日記  

三年めのクールビズ

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省エネを目指した環境大臣が打ちだしたクールビズは、一定の市民権を得て今年、三年めを迎えた。職場では洒落たシャツ姿で仕事に勤しむ人々が見られ、相対する方も、それを受け容れるようになった。窮屈なネクタイを結ばなくて良いと聞き、たちまち広く浸透していったのだった。

しかしスーツ姿ネクタイだけを外すと、それは少し間の抜けた雰囲気が否めない。画竜点睛を欠くとは文字通りで、着こなしの最後を締めくくる小さなポイントが欠落しているよう。凛々しいスーツ姿をスポイルしてはいないだろうか。

テレビのニュース番組に映る総理大臣と大統領が握手する様を見るにつけ、左様に思えてならない。女性陣の意見に耳を傾けてみても、「気楽なムードで良いけれど、やっぱり何かが足りないわ」と異口同音にいう向きが少なくないのだよ。

なるほど、そうか。これ幸いに良かれと思っていたクールビズは、どうやら傍目に物足りなく見えていたという事だ。そう察知していた少数派の伊達男たちは、早くも再びネクタイを探しはじめているらしい。

ファッションの歴史は繰り返す。近年では、そのサイクルは一段と速まり、うかうかしていたら取り残されてしまう。なればこそ、スーツくらいはユニバーサルな着こなしで自信をもって過ごしたいと思うのだ。粋なネクタイで軽快な涼しさを演出してこそ、洒落者の面目躍如。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-05-18 17:01 | 洒落日記  

シャツに凝るダンディズム

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カッターシャツとかワイシャツとか、ドレスシャツは様々に呼び名がつけられている。ワイシャツはホワイトシャツが訛ったもの。カッターとは、某運動用品メイカーがアスリートの健闘を念じ「勝った」をモジって名付けたという。

男が着るシャツをよく観察してみると、それは何枚かの布地が縫い合わされている事がわかる。前と後の身頃は同じ向きに、一方で背中は縦横方向を違えてある。これは体の動きに合わせて強度を保たせ、シャツのヨレを抑えるためのパターンだ。

さらに袖口と襟の部分も別のパーツが縫いつけられる。シャツは元々、カフと呼ぶ袖口と、カラーという襟は着用のときに付け替える仕様だった。それらのパーツは着ているうちに最も傷みやすい部分であり、すり切れたり汚れたとき刷新して使うものとして考案されていたのである。昔の人は賢いねえ。

「デタッチャブル・カラー」と呼ばれる仕様は見られなくなったけれども、シャツの袖には、こだわりを持って着る男たちがいる。やはり現代ではクラシカルに映る仕立てで、それは「ダブルカフス」と呼ぶ、折り返し式の袖口だ。

男がスーツを着るとき、正しくは袖からシャツがチラリと見える長さが相応しい。スマートに着こなすスーツの袖に、さり気なくダブルカフスの袖とカフリンクスが見えたら、ちょっとエキゾチックな気分にさせるのだよ。

一流のダンディズムをシャツで楽しむのも一考。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-05-11 17:00 | 洒落日記  

ズボンと呼んで何が悪い

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戦後、アメリカの文化が大量に流入した日本では、服飾にかかわる言葉が乱舞している。明治のころから時間をかけて培った洋服文化の親しみ深い言葉が、流行にはやされて何か古臭く聞こえるようになったのである。

たとえばズボンと呼んだ衣服は、後にスラックスと言われ、昨今ではパンツと呼んで定着してきたが、玄人の中にはトラウザースなんていう舌をかみそうな名前で呼ぶ向きもある。少しだけ紐解いてみよう。

洋服が来日した当時、フランス語のデュポンが訛ってズボン。アイビーブームの時代には、ドレッシーな羊毛素材をスラックスと呼んで、カジュアルな綿素材なら綿パンと言った。それは後に格好良くチノパンとして親しまれ、ファッション雑誌に飛び交った。トラウザースは英国で広く呼ばれる名称である。

ところでチノパンの「チノ」は綿の綾織り生地を指すもので、第一次世界大戦の当時、英国軍が中国で織らせた丈夫な布地、チャイナクロスのこと。

さて、洋服屋へ立ち寄って品定めをすると、店員が近寄ってきて声をかけられることがある。そこで「おズボンをお探しですか」と尋ねられる場合と「パンツを・・・」では、なんだかこちらを値踏みされたようで気分がよろしくない。どう呼んだってモノに違いはないのだがね。だからお店に入ったら言ってやろう、「チノクロスのズボンを見せてくれんか」と。ズボンと言って、はっは、素人扱いされてはたまらん。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-05-04 15:33 | 洒落日記