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肌着は夏の身だしなみ

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昨今の若者は肌着を指して格好が悪いという。制服の下に色物のプリント柄Tシャツを肌着代わりに使っていたせいか、白いメリヤスが子どもっぽく見えるらしい。風紀に厳しい学校生活のはずだが、本質的な身だしなみよりも、見た目の規律を重んじた成果か。しかし社会生活において、スーツの上着を外したドレスシャツの下に、楽しいプリント柄が透けて良い道理はないだよ。

肌着というと野暮ったいがアンダーウェアは、さても大切な役割を果たす。とりわけ汗をかく日本の夏には欠かせないもので、昨今では消臭効果をもつ特殊な繊維が編み込んであるなど、様々な品物が店頭に並べられている。たしかに汗や体の臭いは自分自身で気づきがたいものだから、よりもって気遣わねばならぬ身だしなみだ。

肌着の多くは吸汗性に富むコットンが好まれる。洗いざらした綿の風合いは肌触りも良好でさわやかだ。古くはクレープと呼ばれるシワ加工を施し、べたつきを抑える生地も工夫されるなど、日本における肌着の歴史は深いのだね。

そしてデザインが気になる。シャツの脇のシミはタブーだから、夏に限って発汗を思えば、ランニング型よりも体にフィットする短い半袖型が好ましい。首の位置がやや高いスタイルは、ボタンダウンシャツの襟元に白いシャツがチラリと覗き、よき時代のアメリカを思わせる。清潔感こそ洒落心の基礎と心得るが男子。夏の身だしなみは大事な社交術なのである。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-06-29 13:29 | 洒落日記  

略礼服は服飾の基礎

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いかような巡り合わせか、このところ黒いスーツに身を包み、冠婚葬祭の席で過ごす機会が多い。末席にあって、参列された方々の装いを見つつ現代の礼装を思うのだった。

日本で私たちが親しんでいる礼服は、本来、夜間の正装であるテイルコート(燕尾服)と、日中の正装とされるモーニングコートが原型だった。上着の丈が短くなるなど、最終的に黒色スーツに変化したので、正しくは略礼服と呼ばれる。

モノがフォーマルなゆえ礼装には様々なルールがあり、うっかり間違えると、とてつもなく恥ずかしい目に遭うので用心しなくてはならない。

お悔やみの席に限ってみるならば、まずシングル、ダブルを問わず背割れをもたない黒の上下。パンツの裾はシングル仕立て。組み合わせるシャツは白無地のレギュラーカラー。生地はブロードクロスと呼ぶ平織りの薄いコットンが良い。タイは黒でシルク素材は欠かせない。靴下も黒。靴は飾りの少ない紐靴でやはり黒がふさわしい。

結婚式ならば最近では、ビジネス向けのスーツを華やかに着こなして出席する向きが増えた。幸いなカップルを愛でる気持ちを表すには、豊かな色彩もよい演出になるので、積極的な服選びが楽しいのだねえ。

しかし黒ずくめの出で立ちは、身を正して相手に敬意を表す意味合いを持つ。限られた服装術だからこそ、洋服の質や着こなしのセンスが浮き彫りになるのである。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-06-22 13:28 | 洒落日記  

隠居の美学

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「あんたは年なんじゃけぇ、地味なのを着んさい」と、当然であるかのように洋服を見立てる相棒がいう。

中年から壮年に限って洋服のセンスを比べると、世界の各地では特色がみられる。開放的なアメリカでは派手な野球帽にサングラス、象徴的にジーンズをはいたオジサンが多い。英国へいくと、人生経験をへて社会的な地位を築いたオジサマが、上質なスーツやタイで華やかな威厳を保つ。これが我が国では冒頭のごとし。はたして何故だろうか。

いまでも「洋服」という言葉が存在する日本では、暮らしの中に「侘び」や「寂び」の心が息づいていて、潜在的にひなびた感情を美しいと認める感覚をもっている。それは年をとると隠居する慣習にも現れ、黙して大人しくふるまう美学として、古来より捉えられてきたことだ。洋服を選ぶとき、だから年寄りは地味になさい、とたしなめられる事に長いあいだ抵抗を感じていなかったのだねえ。

しかし時代は21世紀。明治維新から百四十年を経た現代では、もはや洋服は舶来文化ではなく、日本流儀のファッション感覚がしっかと根を下ろしている。とりわけ中年男子が注目される昨今では、今世風のワビワビを軽やかに愉しむ向きが飛躍的に増えたのである。

年を重ねたからこそできる着こなし。はっは、ちょっと派手な案配がちょうど良いというものだ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-06-15 13:28 | 洒落日記  

シャツ襟が物語る

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ドレスシャツにはいくつかの形状が見られる。いずれも長いファッション史の中で培われて現在に残るもので、背広の胸元にあって、さりげない雰囲気を醸しだす。鏡に映さない限り自分自身では見えないが、いつも気にかけておくべき男子のみだしなみ。

一番数が多くオールラウンドに使えるレギュラーカラー。世界共通の襟型は、正装や礼装にまで用いられる一方で、ビジネススーツにも相応しい。襟の選定に困ったら迷わず決めるべし。

トラッド系のミドル世代に馴染み深いボタンダウンカラーは、一世を風靡したアイビーファッションの象徴的なデザインだ。ポロゲームのユニフォームを見て、風にたなびく襟を固定するべく考案された事が起源となった。したがってシャツ襟の中では、比較的スポーティな誂えと心得るべし。すなわち礼服にはNG。

両襟が広く開いたワイドスプレッドカラーは、英国を代表するクラシカルなデザイン。世紀の洒落男ウインザー公爵が好んで着用し、世界が注目した。大きく結んだタイと組み合わせて、ファッション性を強調して見る者の目を楽しませてくれる。最近では少なくなったタブカラーは、タイの結びの裏で小さなタブを留める。シンプルでスマートな見栄えは50年代のアメリカで流行し、時の映画俳優らがスクリーンで披露した。

シャツの襟にまつわるウンチクは、暮らしの中でも楽しめる洒落男の小さな自己主張なのだねえ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-06-08 13:27 | 洒落日記  

麻のピンキリ

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夏と聞けば麻(あさ)を思い出す。コットンに比べてシャリ感があり、古今東西、夏の衣服に親しまれていた素材である。麻のシワを着こなしたら一人前の伊達男、などと昔のファッション指南は説いていた。

さて一口にいう麻だけれども、その実は原料になる植物によってピンからキリまで細分化されるべきものだ。

大量に出回っている麻素材の原料は、ほとんどが熱帯地域で栽培される苧麻(ちょま)であり、珈琲豆を収納するドンゴロスのように荒くて毛羽立ったもの。収穫は豊かで安価。昔は織布に不向きとされていた。総称して「ラミー」と呼ぶ。

一方で「亜麻色の髪」と代言される亜麻こそ、本来、衣服に珍重された植物。アイルランドなど北欧の気候で栽培される繊維は「リネン」と呼ばれ、極めて細く、絹糸のように均一な長繊維をとりだすことができる。耐染色性に富み、吸水性はコットンの約5倍。衣料品だけでなく、一流ホテルのテーブルウェアにも利用された。古い記録によると、明治の時代には現在の周東町の界隈でも栽培していたという。

現代では純粋なリネン製品は極めて貴重な物だ。その生産量はカシミアを凌ぐ希少性となり、極細糸の服地を扱う縫製工場もなくなってしまったのが実情である。

麻と称するリネンとラミー。それは牛肉と豚肉を一括して肉と呼ぶに等しく、本来はきちんと使い分けていた素材なのだった。今年の夏は麻を楽しんでみるとするかねえ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-06-01 13:26 | 洒落日記