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釣り道楽のエスパドリーユ

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実をいえば、古い自動車と魚釣りはずいぶんと長い道楽。なかんずく磯にあって夢見る釣りは、高島という離島で鯛やヒラマサと格闘することに深いロマンを思うのである。

梅雨が明け夏ともなれば猛烈に暑い。磯際に立つときは物々しいスタイルで過ごすけれども、港に戻り、緊張をほどいて専用のスパイク靴から裸足になったときの開放感は、大変に心地良いものだ。しかしそこで、はたと履き物に困る。素足のまま歩く事もならず、サンダルらしい物を持参するのだが、なかなか理想的なものに巡りあえない。

マリンシューズ風の安価な靴を買ってみたなら、これがすこぶる暑く足が蒸れる。次には面妖な形の健康サンダルを履いてみると、こんどは何とも格好が貧しく、道中で立ち寄る店先でも気が引けるのだよ。

フランスの南西。スペインにまたがるバスク地方に伝統的な麻のサンダルがある。「エスパドリーユ」と名付けられたそれは、麻縄を巻いたソールと麻布のアッパーを麻糸で縫い合わせた、天然素材の単純な履き物。しかし色はアトランティック風で底抜けに明るく、まったく楽しい。かつて80年代に日本でも流行したエスパドリーユが、昨今のロハスブームの中で再び脚光を浴びるかも知れない。

なにより絶海の孤島で過ごす釣りの一日は、やはり自然志向のサンダルがよく似合う。なに「それで獲物はいかに」ふむ、それは聞かぬが華というもの。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-07-27 14:36 | 洒落日記  

ネクタイのえくぼ

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一層と垢抜けたダークスーツにネクタイを結び、党首対談に立った総理大臣。その政策の賛否は別にして、昨今ではメディアに露出する政治家にはスタイリストがつくという。着こなしが相手に与える印象をいかに左右するものか、彼らは洋服でさえ戦略的に利用しているのである。

英国調の白いワイドスプレット襟と、濃いワインレッドに白い水玉模様のタイは、清潔感にあふれ、端正なイメージを漂わせる。着こなしに綻びはない。

無頓着な輩も少なくない政治家にあって、胸像が映し出されたテレビの中の総理に、しかし小さなネクタイの「えくぼ」をみつけた。はて、これは自身の洒落っ気か。あるいはスタイリストの仕業なら、相当な遣い手であるにちがいない。

ネクタイの結びめに「ディンプル」とよぶ小さなシワを寄せる。本来は結び損ないと看過されても仕方ないシワは、実のところ計算された粋であり、おまけに背広のVゾーンに立体感を与える一石二鳥の服装術。古くはハリウッドきっての伊達男、フレッド・アステアなども好んだ結び方だ。

杓子定規な着こなしで堅物と悟られては損。そこでちょっと着崩した洒落で華を添え、好印象を得ようという作戦か。時節柄、いささかうがってしまう洋服屋稼業なのであるねえ。それにしても、はっは、あっぱれ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-07-20 14:35 | 洒落日記  

雨傘を持たれよ

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すっきりしない梅雨空に夏を待ち遠しく思う昨今。雨といえば傘がつきもので、古来から世界の各地で独特な傘文化が育まれてきた。竹と紙でこしらえる蛇の目傘は日本の風土が生み出した逸品だろう。

普段の暮らしにみる傘といえば、手元のボタンを押すだけでたちどころに傘が広がる、ジャンプ式がおおいに支持されている。近年では材質も金属に限らず、カーボンなど現代テクノロジーの産物も採用され、より軽くて強い便利な品物も並べられるようになった。

英国というのは何につけても老舗が存在するお国柄だ。傘においても、その骨だけを営々とつくり続け、王室御用達の誉れを持つメイカーもある。傘の長さや柄の太さも細分化された一流の品。ビクトリア時代にはサーベルを収めた仕込み傘もあったという。

たくさんの職人がモノを造っていた日本でも、頻繁に台風が上陸する愛知県の尾鷲(おわせ)には堅牢な傘があった。傘の構造は通常8本の骨によって布を張るが、くだんの傘には、ていねいに10本骨がおごられていたのである。もちろん昔ながらの手動による開閉。

かつて洒落者は、レインコートや帽子と同じ素材で傘を誂えた。傘の生地や柄には一家言を持ち、雨の日をさっそうと闊歩したのであるよ。

なに、遺失するからもったいない。いやさ、安易なビニール傘で持ち主の品格を量られてしまっては、それこそもったいない。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-07-13 14:32 | 洒落日記  

ブレザーの魅力

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その人物はメタル釦が備わった濃い紺色のブレザーを着ていた。シックな色合いのシャツにタイはない。すっきりと首元を開け放ち、明るいグレイのパンツと茶色の靴が印象的だった。

先頃、ゆえあって今年の鵜飼開きに参加した。存亡が叫ばれた錦帯橋の鵜飼事業を継承する、新会社の設立記念式典が合わせて行われた会場では、著名な方が次々とマイクの前に立ち、祝辞や挨拶を述べた。いずれも企業や団体を代表する社会的責任が高い紳士。出で立ちはそつなく、誂えたであろう美しいスーツ姿に感心するのだった。

なかんずく、口ヒゲを蓄えブレザー姿で壇上へ登ったその御仁は、スマートな身のこなしと、ユーモアに溢れるトークで、如才なく会場の視線を惹きつけた。

一般的に式典の席上では、タイの着用は基礎的なマナーと考えられる。しかし来賓として招かれた特別な立場なら、これに限らない。TPOのお手本として見た一幕である。

そこでネクタイを使わない着こなしにあって、単なる夏用ジャケットではなく、紺のブレザーを選ぶところが妙味。スポーティな感覚を備えたブレザーなら、たとえノータイでも完成度の高い着こなしができるという事を、たぶん紳士は知っている。壇上ではきちんとダブル前立ての釦を留め、その所作にも気遣いが見える。育ちの良さというか、端正な立ち振る舞いに、ほとんど清々しい気分でひとときを祝って楽しんだ。

素晴らしい人々に囲まれた錦帯橋鵜飼の未来は明るいねえ。万歳。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-07-06 14:31 | 洒落日記