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スタジャンの匂い

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この匂い、重さ、そして派手な色合い。「スタジャン」と呼ぶそれは、フットボールクラブ毎に揃えて着用するユニフォームのようなものだ。東部アメリカのエリート大学生たちが愛用し、60年代に一世を風靡した。

身頃はメルトンと呼ぶ毛布のような厚いウールで、色を違えた革の袖を備え、さらに胸にははチームを表すレター・ワッペンが誇らしく飾られる。ほかにも大袈裟なししゅうや、対抗戦に勝利したときの記念が衣服の所狭しと描かれ、長いクラブ生活の栄光を刻むジャンパーとなる。スタジャンとは、そんなスタジアムで使うジャンパーをして生まれた和製英語である。

雨や風にさらされるスタジャンは年季が入る。ピカピカの真新しいジャンパーを着る新米は、先輩たちの姿を見て憑依を思い憧れて、いつかは立派な選手になろうと心に誓うのだった。

昨今では科学的な研究を尽くした繊維が開発され、多くは歴史を感じさせる風合いとなる前に、さっさと新しいモノへ取り替えられてしまう。機能性を一義にすればたいへんよろしい事にはちがいないのだけれども、どこか一抹の寂しさがぬぐえないのだねえ。

かかる蛮カラ精神を知る団塊世代が定年時代を迎えた。ふと日々の遊び着に目を向けたとき、彼らの目に留まったのは、かつて馳せた思いを彷彿させる匂いと重さだったのだろう。スタジャンを着たオジサマが街を闊歩している。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-10-26 17:26 | 洒落日記  

サスペンダーの妙

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季節が深まってくると、あれこれと洋服の事に考えを巡らせる。重ねて着こなす色や素材はどのようにするか。それは靴やベルトまで思いは至る秋の夜長。

現代の服飾には縁が薄くなってしまった「サスペンダー」は、和風にいうところのズボン吊りだ。いかにも野暮な名前がつけられたものだが、本来ベルトを備えなかったパンツに無くてはならぬ備品だった。

英国へ行くと「ブレイシーズ」と呼び、今でもスーツやジャケットを着用するときには、年配をとわず愛用者が多い。なぜならパンツの佇まいをとても美しく見せる機能を備えている事を、多くの英国人は知っているのである。

サイズを合わせたパンツを穿いてベルトをすると、ウェストの案配はちょうど良くなる。しかしパンツのウェストラインはヘソの辺りにあり、これを「股上が深すぎる」と感じる向きが少なくない。したがってベルトで締め付けたウェストは、動き回るうちに腰骨の位置まで下る。するとどうだ、足は短く見えてしまい、パンツの折り目も必要以上にブレイクしてしまうのだねえ。

サスペンダーはパンツを肩から吊り下げるモノ。すなわちウェストを正しく高い位置に保つので、折り目は美しく端正なスーツ姿を創り出す。決して誇負するものではないが、
ジャケットの中にチラリと見える男子専用の名脇役。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-10-19 17:25 | 洒落日記  

地味好み

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長い間、ファッションの傾向と景気動向は比例するといわれる。高度経済成長期にはアイビーファッションが席巻し、バブル経済が伸びた時代には、イタリアもどきのカラフルなスーツを着るビジネスマンがオフィスを彩った。女性の装いも同じように、きらびやかな飾りが増え、素肌の露出に遠慮がなくなったのである。

ところが昨今のブティックや雑誌を見ると、どうも一概に比例とはいえない。若い世代を中心にタレント紛いの装いがエスカレートする一方で、堅実で大人しい洋服も美しくスポットライトを浴びている。これを経済格差の現れとみるか、飽和状態に達したファッション業界の現状をみるか、さて。

思うに、日本人には古来より「奥ゆかしさ」を愛する民族性がある。つまり生来もっているのは派手好みではなく、根底に地味好みな気性があるのではないだろうか。贅沢を悟られぬよう裏生地に趣向を凝らせた江戸っ子の着物や、「詫び寂び」という渋味を愛でる価値観は、今も昔も大勢の日本人に理解される。

ときにネクタイ。このところのタイはクラシコイタリアの流行をうけて、やけに地味な色柄の物が増えた。タイだけを見ていると、どうしようもない程に地味なのだけれども、やや派手と思えるシャツと合わせたら、意外やこれが映えるのだねえ。

景気経済は人々が創りだすもの。能動的な着こなしで世の中を引っ張るべし。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-10-12 17:24 | 洒落日記  

赤色

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あまねく色の中で「赤」は現代社会にあって、赤信号など人に注意を促す色として用いられたりする。古くは諺「亭主の好きな赤烏帽子」にも見られるとおり、やはり珍妙な色、あるいは奇異で目立つ色の代表格だったようである。

これがファッション界に目を向けると、その強い性格から情熱を表す躍動的な色に例えられ、色彩バランスを考える上でも重要な役割を担う色とされる。

たとえば替え上着の代名詞のように言われる「ブレザー」の語源。その昔、オックスフォード大学とケンブリッジ大学が競うレガッタ競技のユニフォームに、彼らが真紅のフランネルジャケットを揃えた。それはテームズ河へ華やかに映り、観る者は「おお、燃えるようだ」と絶賛した。「オー、ブレイズ!」後に赤いジャケットはブレザーと呼ばれるようになったという。

古今東西、いろいろな意味で一目置かれる「赤」は、それでは今どのように着こなせば良いのだろうか。

TPOを考えるなら、職場にあってあまり派手な使い方は避けねばならない。しかし男の服飾でも多彩な色が許されるネックウェアなら、ときにインパクトがあって良い。休日を遊ぶなら話しは別。かのジェームス・ディーンのような、デニムのパンツと真っ赤なジャンパーなら年齢不問というものだ。山粧う秋、モミジの紅が待ち遠しいねえ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2007-10-05 17:23 | 洒落日記