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鵜匠

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錦川に伝わる鵜飼いに新たな楽しみが加わえられる。先頃の「桜舟」に続く日中の鵜飼い興業「昼う飼」。さらに鵜の飼育施設を見物できるよう誂え、川面で巧みな身のこなしを魅せる鵜を観覧しようというものだ。伝統としての鵜飼いと、興業としての鵜飼いがマッチした妙案である。

ときに鵜匠の衣装に関する考察。暗闇の篝火(かがりび)に照らし出されるだけで、確たる姿は見えなかったが、ホームページによれば「鵜匠の服装は昔のままの伝統を踏襲し、頭に風折烏帽子(かざおれえぼし)、衣装を着て、胸に胸当て、腰に腰蓑(こしみの)をつけ、足に足半(あしなか)を履いています」とある。なるほど、いずれも古来より狭い船の上で、鮎に気取られぬよう動くための機能を考慮して生み出されたものだろう。

興味深いのは、そのすべてが布や植物繊維によって拵えられている事だ。農耕民族とされる大和文化では、主に植物を暮らしの糧として生きてきた。一方で狩猟民族が生きた地域では、動物の革が生活の道具に用いられた。馬具を見れば一目瞭然。日本の武将が使った鞍や手綱はやはり布と木である。

鵜匠はワラを撚り合わせた手縄(たなわ)を使って鵜を操る。この縄は逆撚りになるとたちまち切れる仕掛けなのだという。鵜と鵜匠の信頼関係はかくも優しいねえ。

今年は青空の下で華麗な鵜飼いが観覧できる。桜がほころぶ錦帯橋へ行ってみるかね。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-03-28 16:12 | 洒落日記  

服装の演出力

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「仰げば尊し」とは卒業式の伝統的な唱歌だ。昨今ではポップス、歌謡曲などが好まれる一方で、やはり根強く各地で歌い継がれているという。現代っ子のライフスタイルには縁遠い歌詞にはちがいないけれども、厳粛な式典である貴い一日には相応しい歌といえるのだろう。

もはや遠い記憶の彼方に追いやってしまった卒業の日をたぐり寄せると、昨日まで親子か兄弟のように接していた先生方が、この日ばかりは違って見えたことに気づいた。

日頃はトレーニングウェアで竹刀を振り回していた先生も、白衣に身を包み寡黙にペンを走らせていた先生も、みな一様にダークスーツを着用し、学徒である我々とは一線を画すように講堂の上座へ並び、だれもが温かく見守るような目で立ち尽くしているのである。「ああ、この人たちは大人なんだ」と、子どもたちは哀れにもそこで思い知るのだった。

おりしも卒業式の刹那。学徒は自らの人生に小さな節目を感じ、はじめて感謝を思い起こし、清々しい気持ちになって式典を辞する。

服装が醸しだす演出力は大きい。いくら饒舌にしゃべっても、崩れてしまった着こなしでは相手に与える印象も相応のものでしかない。如才なく立ち振る舞うためには、良い服を正しく着こなすことが不可欠なのである。

それにしても苦労と感動の起伏が大きいものだねえ、先生と呼ばれる職分は。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-03-21 16:11 | 洒落日記  

シービーボウル

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さる金曜日。ゆえあってパーティ「シービーボウル」を楽しむ機会を得た。米軍岩国基地で催されるパーティは、海軍の設営部隊であるシービーズのお祭りだ。六本の手足に工具を持つ部隊のキャラクターは、正式名CB(コンストラクターズ・バタリアン)を「海の働き蜂」ともじった、アメリカ流の真摯なジョーク。一九四二年に軍が正式に採用したという。

さてクラブ内のパーティ会場では出席者が華やかにドレスアップし、愉快なおしゃべりと素晴らしい料理でひとときを過ごすのだった。

その装いといったら、洋画のスクリーンへ飛び込んだかのごとし。ご婦人は美しいイブニングドレスで優雅に振る舞い、軍人は正装で佇む。とりわけ下士官が着用する濃い紺色のスペンサージャケットには金色のブラスボタンと勲章が並び、真っ赤な側章が備わるパンツと、同じく赤いシルクのカマーバンド。男の服飾の原型がそのまま再現されているのだ。

なにしろドレスコードに関しては、厳しい規律に則るのが彼らの日常である。その格好のよい姿は、ただ背格好だけの問題ではないだろう。日々の生活に責任を自覚し、なによりも場慣れしていることがサマになる大きな一因にちがいない。

背筋をのばして毅然としゃべるスピーチは、パーティ会場でひときわ熱い視線が注がれるのだねえ。ねがわくば、その光景に字幕スーパーを重ねていただけたら。阿々。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-03-14 16:10 | 洒落日記  

メンクラといえば

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最近、駅前を車で通ったことがあれば、ひどく往来が難儀なことはご存知だろう。その繁華街の一角は有楽通りと呼ばれ、アーケード街が盛んになるより早く、飲食店や洋品店が建ち並ぶ賑やかな筋だった。店はそんな一角にあり、すでに半世紀以上を過ごしているわけだ。

ときにアイビーブームが巻き起こっていたころ、岩国駅前はちょっと話題のスポットだった。婦人画報社によって発刊されていた雑誌「メンズクラブ」といえば、ファッションに興味をもつ当時の若者にとっては、ほとんどバイブルのようなカリスマ性をもっていた。なかんずく本書の連載企画「街のアイビーリーガーズ」は、取材スタッフが全国の町を渡り歩き、その町の一番の洒落者を撮影。全国誌であるメンクラの「街アイ」コーナーに掲載されるのである。

撮影取材の情報を耳にした彼らは、だから思い思いの出で立ちで洒落込んで、駅前を闊歩した。あたかも偶然に通りかかったかのように素知らぬ顔をして、カメラマンの前後を徘徊する。首尾良くファインダーに収まり、翌月の雑誌に載ったなら、そりゃもうベストドレッサーの勲章を得たも同然の欣喜雀躍なのだねえ。

そんな彼らがカメラの前に立ったのは、とりもなおさず有楽通り。工事を終え美しく生まれ変わった暁には、再び洒落者が似合う街になるだろうか。春はもう近い。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-03-07 16:09 | 洒落日記