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洋服屋の理性

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雑誌アエラを読んでいて、高村薫さんによる興味深いコラムに、ふと気づかされた事があった。先の洞爺湖サミットを「生存を脅かす危機への直感と理性が人間を急いで別の生き方へと招いているのである」と女史は説く。地球温暖化に対する一つの見識であり、野放図に発達してきた人類の転機を描写するくだりだ。

原油の高騰が引きがねとなって、巷ではあらゆる物品の値上げが加速して止まない。消費意欲はひどく萎縮してしまい、市場は深刻な不景気風に吹かれ、「余計なモノは買わんよ」と誰もが思い始めたワケだ。

アイビーとかトラディショナルと呼ばれるジャンルの洋服は、古今東西、流行が無くて長く着られる事が美徳だった。ところがバブル景気に沸いた時代、その余りにも保守的なデザインが面白味を欠くといって、いつの間にか流行を意識した造作が歓迎されるようになった。今になって思うと、それは決して消費者からのニーズではなく、むしろ服を拵えるサプライヤーの「売りたい一心」ではなかったか。すべからく物事は、内側から見えぬ事が傍目にはわかるのだねえ。

美徳をかなぐり捨てて流行に走った保守的ファッションなんて良いはずがない。メイカーと一緒になって品揃えを陳腐化させたことを猛省し、今一度、長く着られる洋服を見つめ直したいと思うのだった。あたり前の事をあたり前に勤しむための直感と理性。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-07-25 18:27 | 洒落日記  

真夏のコットン

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「夏はこんなにも暑かったか」と訝しく記憶をたどるこのごろ。梅雨明けの知らせを聞いた矢先の都市部における猛暑は、やはり土の大地の欠乏と、冷房など人為的な排気熱に遠因がありそうな気がしてならない。地球温暖化というキーワードが奇妙に思い出される昨今である。

必要は発明の母。繊維業界では暑さをしのぐために様々な素材が開発されていて、なかんずく運動選手に向けた発汗機能の研究は日進月歩。激しい運動によって汗をかいても、たちまち乾いてしまう快適な布が数多くある。説明書きによると、糸を成す繊維にミクロ単位の細工が施してあるなど、もはやそれは肉眼の領域を超えているという。

ファッションアパレル業界では、これらを機能素材と呼び、タウンウェアに流用する傾向が多くみられる。一見すると普通のポロシャツが実は最新のポリエステル繊維だったりするわけだ。しかし悲しいかな、運動をして噴出する汗と、街を歩いて汗をかくのは少し感覚が異なり、必ずしも有能な機能を果たせないのが現実。結局はコットンやリネン(麻の一種)など昔ながらの天然素材が人気を博しているのだねえ。

子どもたちは夏休みを目前にし、夏の風物ともいえる夜市も駅前や各地で開催されている。いよいよ夏も本格化。柔軟剤もなく洗いざらした綿の着心地は、幼いころ、友だちと遊んだ真夏の日記の一頁に綴ってあった。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-07-18 18:26 | 洒落日記  

シャツの裾

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ここ数年、街をゆく女子高生のシャツが不可解でならない。裾を中途半端にスカートの外へ出したあの姿は、いったい何を意味するのだろうか。学生の社会では得体のしれぬ事柄が理由無く流行するが、ルーズソックスに継ぐ七不思議の一つである。

聞くところによると、スカートの総丈を短く見せるため、ウェストベルトを折り曲げているらしい。当然ながら見た目に格好が悪いのでシャツの裾を出すことで隠しているという。おそらく最初はだらしないと感じたが、多数の同志が生まれるうちに、審美眼は基準が変わってしまうのだろうねえ。それにしても、もう少しマシな流行は無いものか。

閑話休題。男子がシャツを着る場合、実際の胴回りよりシャツのほうが大きく仕立てられていて、裾をパンツの中へ入れると周囲には必然的にシワができる。頓着せずに着てしまったら、どこか幼稚な佇まいになってしまい、せっかく着こなしたクールビズも見劣りがするというもの。

シャツに袖を通したら、まず裾を持って左右へ引っ張る。次に前身頃と後ろ身頃を縫い合わせた部分を山にして、胴体より余分な生地を指でつまむ。やおら左右の腰に指を当て、つまんだ生地を後ろへ折り曲げる。そうしてパンツの中に収めることで、前身と後ろ身はピタリと体にフィットするのである。和服から学んだ洋服術。美しく見せる事を学びたまえ、女子高生諸君。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-07-11 18:26 | 洒落日記  

カットソーの衿台

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「衿台(えりだい)」とは近年、注目されているシャツを構成するパーツの一つである。首の周りにあって、衿の土台にあたる部分の布地。シャツの着心地や着用したときの映りを左右する、立体裁断の要といえる。

一般的にシャツといえば、ボタンダウンシャツのような綿織物である布帛(ふはく)と、ポロシャツに代表されるカノコ編みによって拵えるニットがあり、言葉は実に紛らわしい。前者を単純に「シャツ」あるいは「綿シャツ」と呼び、後者は、切って縫い合わせるという意味の「カット・アンド・ソー」を簡略化した造語。本来は業界用語だったが、ファッション雑誌が連呼し、すっかり市民権を得た。

さて、柔らかい肌触りのカットソーは洗濯後もアイロンをかける必要が少なく、カジュアルな着こなしには重宝する洋服。かつてはワンポイントししゅうを施し、様々なブランドがしのぎを削った記憶はまだ新しく、現在でも多くのファンに支持されている。

そのカットソーに少し異変が起きた。ポロシャツの衿にはジャージ素材の布が縫いつけられていて、ボタンを外して着ると衿は体に沿って寝てしまう。そこで首が短い日本人の体型をスタイリッシュに演出するべく、シャツの衿と衿台をポロシャツに合体させたのであるねえ。

一見するとポロシャツ。しかし首が細く顔が小さく映る今時の流行。イイじゃない。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2008-07-04 18:25 | 洒落日記