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オックスフォードクロス

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「こりゃあ厚手じゃね。冬物じゃないの」メンズショップの店頭で、しばしば夏になると出くわす一幕。白やブルーのシャツを訝しく手に取って話す向きは少なくない。洋服屋がもう少し親切な商品説明を付けておけば良いのだが、それが無ければ誰もが勘違いをしてしまうシャツの生地だ。

オックスフォードクロス。一般的に「オックス」と省略して呼ぶことが多い木綿の生地は、たてよこ共に二本の甘く撚った引き揃え糸によって織られたシャツ用の服地。通気性を持たせるため、やや太い糸を使うことから生地に厚みが生まれ、ちょっとした重量感を覚える。

本来、ドレスシャツに用いる服地はシルクだった。後に綿糸の加工技術が発達し、シルクのような木綿のシャツ生地が一般化した。これがカッターシャツによく見られる「ブロードクロス」と呼ぶ生地である。しかし細い糸で目が詰まっているので、いかにも夏には暑い。そこでスコットランドの機織り屋が考案したのが、件のオックスだった。ケンブリッジやハーバードなど大学都市の名前を付けた他種の生地もあったというけれども、今となっては定かではない。

由来はどうあれ、夏を快適に過ごす目的で考案されたオックスフォードクロス。洗い晒した白いボタンダウンは、クールビズにも最適なシャツなのだねえ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-07-31 12:41 | 洒落日記  

靴を水で洗う

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靴において、それまでの手入れの概念を革命的に覆したのは、とりもなおさず「サドル・ソープ」だった。小遣いを貯めて健気に購入した上等の靴は、雨の日には使わないほうが無難と教わり、天気予報を見ては足を入れる好機をうかがっていた靴だ。あろうことかその靴に、自らの手で水を浴びせかけるというのである。

当時は手入れ用品の問屋と試行錯誤を繰り返していた頃。見たことも無いクリーム状の薬剤や、奇妙な形の様々な道具を欧州各国から取り寄せ、説明書きを翻訳しつつ互いの私物である靴が実験台になった。中には誇大表示と思える説明や、うっかり誤って致命的なダメージを与えた製品など、それはまさに玉石混交の有様。靴用石けんは、そんな中から掘り出した。

本来、皮革は雨や水に対して丈夫である事を知っていたからこそ、縫い合わせて靴の材料にあてられたものである。雨天も厭わぬ乗馬の道具にも古くから用いられた。そして彼らは同時に、皮革を長持ちさせるための手入れも考案していたが、やんぬるかな日本へ輸入されたのは皮だけでしかなかったのだねえ。

件のソープは動物性油脂で作った石けん。表面の汚れを落とすより、皮の水分と脂分を最適化することに重きを置く。あえて靴を水で濡らし、石けん成分を補うことで、相反する水と油が同時に補給でき、じっくり乾燥させれば最適化が成される優れ物。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-07-24 12:40 | 洒落日記  

デリケートクリーム

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靴の手入れに興味を持ったのは、いまから三十年ほど前のことだった。当時はまだ靴墨という品物が幅を利かせていた時代で、靴の手入れというと、そのワックスをひたすら靴へ擦りつけ、ピカピカの光沢を醸し出すことを指していた。木綿の布に加え、極細のナイロン繊維で摩擦をおこすと光沢は一段と増し、鼻高々に街を歩いていた。

ところが美しく輝く靴は、なぜか突如としてひび割れたのである。ちょうど革にシワが寄る部位がパックリと口を開け、「こんなに磨いとるのに、何でじゃ」と途方に暮れたことが忘れられない。それから靴、いや革について調べ始めた。手塩に掛けた靴が何故傷んでしまったのか、その真相を知りたかったのである。

まず靴墨とは何か。革のコンディションとはどういう事か。どんな道具をどのように使えば靴を長持ちさせることができるのか。その答えは英国にあったのだねえ。

古来から馬具に革を用いた欧州では革のことを知り尽くしていたけれど、木や縄を用いた日本において革は、やはり舶来した素材でしかなかった。大きな違いは、ここにあった。その答えとは、さて。

水と脂。すなわち革の良い状態を保つためには、適度な水分と脂分を含ませておくことが大きな条件なのである。靴墨は化粧品でいうところの口紅であり、肝心なのは革と対話し、栄養を補うこと。デリケートクリームには英国王室御用達と記してあった。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-07-17 12:39 | 洒落日記  

梅雨明けと靴

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天気予報が梅雨前線の動きを説明していた。空梅雨傾向にあるとはいえ、列島はまだ梅雨の時期。曇り空からパラパラと雨が落ちてくる日も少なくない。「雨に唄えば」と聞いてジーン・ケリーやフレッド・アステアを思い浮かべる向きは相当な洒落者と思われるが、今はもう昔の事になってしまったか。

さて、雨が降っても靴は暮らしの必需品。とりわけ雨用の靴を履けば良いけれど、多くは晴雨兼用。革靴を水たまりや雨で濡らしてしまうのもやむを得ないのが実情だ。高級な靴は傷んでしまいそうで、やはり不安が拭えないもの。

しかし靴に採用された革、とりわけ牛の皮革は本来、高い耐水性を持っている。その耐水性ゆえに古来から革は、靴や馬具など屋外であらゆる天候にさらされる条件下に相応しいと見出されたのだ。ところが高価な舶来品だった靴は、「雨の日には傷むので履かない方が良い」とまことしやかに流布され、いつのまにか雨は靴の大敵となってしまった。

問題は後の手入れにある。雨にかかわらず濡れた革をそのまま放置すれば、靴の価格を問わずどんな物でも傷んでしまうは必定。それでなくても現代住宅の下駄箱は、湿気が多い構造なのだからねえ。

本来は通年。しかし最も肝心なのは、梅雨明けの今時期に正しい手入れができるか否かが、大切な靴の寿命を司る。上手く使えば十年は付き合えますぞ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-07-10 12:38 | 洒落日記  

クールビズに違和感

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物議をかもした日本郵政の人事は、先頃の株主総会で前任者の続投が決まったという。株主の議決が国民にとって良い事だったか否かは計り知れぬけれども、それを報じるテレビ映像を見ていて、少しがっかりしてしまった。総務大臣が、再任された社長に認可書を手渡すシーンである。

五年めとなるクールビズは、ときの環境省が推進して始まった夏の仕事スタイル。空調を抑制し、涼しげな着衣で仕事を進めることで地球温暖化を防止しようと提唱された。結果的に男性はタイを外し、シャツの襟を開け放つ着こなしが定着してしまい、いつの間にかノーネクタイこそがクルービズの象徴と誤認してしまった経緯がある。

そもそもスーツとドレスシャツを着用していながら、タイだけを結ばずに過ごす着方は、明らかに要を欠いている。画竜点睛を欠く出で立ちを、もしも互いが認め合うことがクールビズだというなら、それは大きな勘違いだ。あくまでも便宜的にネクタイを外して過ごすのであって、公の立場で、しかもテレビカメラが向けられ、大衆の代表として立ち振る舞うのならば、ネクタイは結んでいて然るべき事。

再任された社長は当然のようにタイを結び、認可書を手渡す大臣がタイをしないなど、マナーの欠如も甚だしい。それを是として持てはやすとしたら、やんぬるかな何処の誰が政権を取っても、未来に大きな期待などできないねえ。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-07-03 17:27 | 洒落日記