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あるベルトの修理

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さきごろ、二十年前のニット製品を修理した一話があった。それは通常の業務範囲を超えたものだったが、可能な事を断る理由はなく当たり前に役割を果たしたのだった。

それから後も修理依頼は少なくなく、多くの方は困った挙げ句に尋ねて来られる。いずれの物も必ず製造工程はあるのに、なぜ修理ができないのだろうか。いや修理ができないのではなく、修理を頼める窓口が見えにくいことが原因なのかも知れない。

とある靴のメイカーは、自社製品以外の修理は受け付けないという。表向きには製造方法の微細な違いが修理の精度を下げるためと言うけれど、その裏にはつまり、顧客の囲い込みをするための付加サービスが無いとは言えない。実際に靴の職人に尋ねると、「完全な元の色や形にはならんが、修理はできるよ」という。そうだろう。いわゆる商業主義が成熟期に達し、サービスという言葉が巷に溢れ、何が本当に必要なのか、どうする事が利用者のためになるのかを見失ったのではないかねえ。

一通のメールが東京から届いた。数年前に購入した革のベルトが不具合を起こしたので修理して欲しい、とあった。ベルトの加工製造をしている職人へ連絡をとり、東京から岩国を経て大阪へ届けると、それは指示した他の箇所まで美しく修繕されて戻ってきた。職人は、自身が手がけた品物を大切に使い続けている人がいた事に、大層感動したのだという。流通業界の過大な競争力が必ずしも良いと思えなくなってきた現代の一幕。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-09-25 18:39 | 洒落日記  

スプリットヨーク

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ドレスシャツの仕立てに関する事柄。いつも着ているシャツをハンガーへ掛けて後から見ると、背中の上部に横向きの生地が縫い合わせてある。縦縞柄のシャツなら一目瞭然。

日本では「肩はぎ」と呼ぶスプリットヨークは、人間の体の構造に合わせた合理的な仕立てだった。背骨の頂点から左右に伸びる人の肩線は水平ではなく、やや下がっているもの。ひとたび両腕を動かせば、背中の当てた「肩はぎ」は、やはり肩線に沿って引っ張られる。

一方で織られた布は、水平垂直方向の引っ張り強度は高いが、斜めに向かって引くと意外なほど脆い。織り目は菱形にねじれてしまい、形が崩れてしまうのである。ただし、それは織布の技術水準が低かった当時のことで、現代では、細い綿糸を緻密かつ均等に織ることができるので、斜め方向の脆弱性は大きな問題にならなくなった。

スプリットヨークは、そんな時代の智恵として考案されたクラシカルな仕立てである。ところが、実際に縫製の工程を考えると大きな手間がかかり、製造する側に立てば省略したくなるもの。いつの間には忘れ去られた仕立てとなった。

来シーズンの展示会へ赴いたおり、スプリットヨークのシャツを見つけたので、嬉々として営業担当の若い兄さんに尋ねた。すると「ああ、本当だ。そうなんですか」と、まあ、時代は変わっていくのだねえ。南無三。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-09-18 18:38 | 洒落日記  

パンツの合わせ方

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男子がパンツ型の衣服を着るようになって久しい。しかし元は着物を身につけていた過去があるせいか、そのパンツを充分に着こなしている御仁は意外に少ない。これは洋服店の売り方にも一因があるのではないか。

多くの男はパンツを選ぶとき、まず着丈を気遣う。つまり裾上げをした後、足の甲へ被さる裾の長さだ。特殊な流行は別にして、甲には「ワンブレイク」と呼ばれる僅かなたるみが佇まいを優雅に見せるもの。そして次に裾や腿の幅。太すぎず、細すぎず、適度な寸法を良しとするならば、今時なら裾幅二十二、三センチ、膝幅二十六センチ前後が妥当だろう。

そしてデザイン。腰のタックや裾の折り返しの有無。果てはベルトやポケットの形など、パンツにはいくつかの代表的な意匠がある。ここまでは、ちょっと詳しい販売員に尋ねると応えてくれよう。

問題は股上。既製服の場合は修正が困難だから話題にしないのか、誤って着用すると、やけに貧しい見え方になってしまうもの。股上が深いパンツはクラシカルに見えるので、近年では好まれている。ところがジーンズのような安易な着方で腰骨へベルト位置を合わせると、股下に余分な空間が生じる。残念なことに、これでは短足な体型に見えてしまうのだねえ。既製品パンツは股上に気遣って着るが良し。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-09-11 18:35 | 洒落日記  

シャツの合わせ方

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足早に夏が行き、秋がやってきている。そろそろクールビズには見切りを付けねばならない時節であり、解き放った首元にも豊かな表情をもつネクタイが戻ってくる。やはり、きちんと着こなしたスーツ姿にこそ、男を物語る色香は醸し出されるものだねえ。

さて、一旦緩めてしまった首に再びタイを結び下げるのは苦痛のようだけれど、ここで油断をしてはならない。それでなくても昨今のドレスシャツは、少しルーズなサイズ合わせが常態化していて、こんな姿を世紀の伊達男ウィンザー公に見られたら、さぞ嘆げかれるに違いないのである。

それはネックサイズの合わせ方。シャツの採寸には首周りとユキ丈、肩幅、上中下の胴寸、それに総丈がある。既製品のシャツを選ぶ場合は、主にネックとユキ丈を見て合わす。なかんずく首周りは本来、裸体にメジャーを当てて測ったヌード寸法に対して、約十五ミリを加算した表示サイズが丁度良いとされる。実際に着用すると、第一ボタンを留めて指一本の余裕が生じる程度だ。

ところが窮屈感を嫌うゆえに、少し大きな首サイズを着用する向きが増えた。シャツの首に余分な隙間があると、レギュラーカラーなら襟は浮き上がり、ボタンダウンカラーならロールが潰れてしまうなど、実にだらしない佇まいになってしまうもの。新政権と共に始まる秋のスタートダッシュは、正しいサイズでキリッと着こなすべし。

絵と文・ふじたのぶお
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by foujitas | 2009-09-04 12:45 | 洒落日記