パンツの裾の折り返し
「裾はどのように?」と、パンツを仕立てられるとき必ず尋ねる一節に「ダブルにしてね」と答える洒落者たち。
ダブルとシングルを選択する基準は、スーツの歴史をさかのぼれば見えてくる。
室内着として誕生したスーツの裾は本来、シングル仕立てが正しいものだった。やがて男たちは屋外で短靴を履いてスーツを着るようになり、靴に砂が入ることが煩わしく、裾を折り返してダブル仕立てで着用するようになった。だからスポーティな着こなしにはダブルで、ドレッシーなときにはシングルで着るのが正しいといえる。裾を三つ折りで縫いつけたチノパンのスタイルは、ジーンズにも見られる最もラフなデザインだ。
しかし英国エドワーディアンが愛したカントリースタイルから学んだ、アメリカのアイビーファッションでは、パンツの裾をダブルカフスにして仕立てた。ビジネススーツやチノパンの裾を折り返して着ることが、洒落者の粋だった。
趣向や用途、生い立ちなどを併せてみれば、パンツの裾もまた一考。ダブルカフスのパンツが増えてきた昨今に、キレイ系ファッションの再来を感じるのである。
絵と分・ふじたのぶお
by foujitas | 2006-09-23 18:12 | 洒落日記