雨傘を持たれよ
すっきりしない梅雨空に夏を待ち遠しく思う昨今。雨といえば傘がつきもので、古来から世界の各地で独特な傘文化が育まれてきた。竹と紙でこしらえる蛇の目傘は日本の風土が生み出した逸品だろう。
普段の暮らしにみる傘といえば、手元のボタンを押すだけでたちどころに傘が広がる、ジャンプ式がおおいに支持されている。近年では材質も金属に限らず、カーボンなど現代テクノロジーの産物も採用され、より軽くて強い便利な品物も並べられるようになった。
英国というのは何につけても老舗が存在するお国柄だ。傘においても、その骨だけを営々とつくり続け、王室御用達の誉れを持つメイカーもある。傘の長さや柄の太さも細分化された一流の品。ビクトリア時代にはサーベルを収めた仕込み傘もあったという。
たくさんの職人がモノを造っていた日本でも、頻繁に台風が上陸する愛知県の尾鷲(おわせ)には堅牢な傘があった。傘の構造は通常8本の骨によって布を張るが、くだんの傘には、ていねいに10本骨がおごられていたのである。もちろん昔ながらの手動による開閉。
かつて洒落者は、レインコートや帽子と同じ素材で傘を誂えた。傘の生地や柄には一家言を持ち、雨の日をさっそうと闊歩したのであるよ。
なに、遺失するからもったいない。いやさ、安易なビニール傘で持ち主の品格を量られてしまっては、それこそもったいない。
絵と文・ふじたのぶお
by foujitas | 2007-07-13 14:32 | 洒落日記