お正月の神社にて
遠方の旧知から届いた賀状をめくりつつ、昼間から杯を傾けた正月。元旦は山陰で釣りと決めていたものの、折からの寒波で海は大シケ。「今年はええ子にしときんさい言う事よ」などとなだめられて一年が始まった。
そんな三が日。初詣をかねて白山比咩神社へ、商売繁盛、家内安全と今年の幸いの祈願に参った。錦川は清く、錦帯橋は優美に佇み、あらためて岩国の佳い事を思って過ごした平和な年明けだ。
日和も良く、大勢の参拝者で賑わう神社の境内には、人々の柔和な表情があった。日頃はスーツに身を固めた企業戦士であろう男性も、このときばかりはセーターにマフラーを巻き付けて、安息の中でひとときを楽しんでいるようだった。
参拝の後、山門で一礼を捧げる老夫婦がいらした。やや足が弱った奥方を気遣い、そっと手をさしのべるご主人の優しさ。数段の石段を歩く僅かな合間に、レディファーストの精神を垣間見たよう。端正な着物姿の女性のそばで、暖かそうなツイードのジャケットを着て、ハンチングをかぶる姿が凛々しい。革の手袋をはずして手を添える愛情は、いかにも心が温まる。良い眺めだねえ。
今年はあのご老人にあやかり「正しい紳士の振るまいで貫こう」と心に思う年頭の洋服屋なのだった。本年もよろしくお付き合いくださりませ。
絵・文 ふじたのぶお
by foujitas | 2008-01-11 17:49 | 洒落日記