スリムフィット
近頃、洋服屋でパンツやジャケットを試着してみると、やけに窮屈に感じる事がある。同じサイズ表示の服を着ても、なんだか腹周りの余裕が少ない。女房に気取られぬよう、試着室の中で「わしゃ、太ったかのう?」と小さく口を衝いて出るのである。
オジサマ諸兄。けっして自責の念に駆られることはない。なぜなら最近の洋服は、あきらかに細身の仕立てで造られているので、同寸法でも小さく感じるのは至極当然。なにも腹ばかりのせいとは限らない。
バブル景気に沸いた当時、メンズファッションは著しくサイズが乱れた。肩幅や胴周りは大きく、袖も長い。それをイタリア風だといって誰もがダブダブのスーツを着用し、日本列島の中で互いが格好良いと認め合った。そんな経験則を持つ世代の洒落者が細身の洋服に袖を通したら、余計に小さく思えてしまうのだ。
しかし、その前を思い出してみられよ。アイビーファッションが全盛だった頃、ブレザーもボタンダウンシャツも細くスタイリッシュに仕立てられていた。はにかみつつ袖を通して、これが大人の洋服なんだ、と感慨にふけっていたはずである。
いまさら学生のような体格に戻すなんて望むべくもないけれど、さきごろメタボ検診が義務化された。バブリーなサイズに慣れてしまった体格を、この際ちょっと見直してみるかね。スリムフィット、なにくそ。
絵と文・ふじたのぶお
by foujitas | 2008-06-27 18:24 | 洒落日記