ハンカチは偉大なる小物
「あんた、ハンカチ持ったん」幼いころ登校する直前に親から声をかけられた記憶は、いまだ耳の奥に残っている。しつけとは、こういう事を指すのか。口やかましく言われたハンカチは、思うに老若男女を問わず如何なる場所でも、身だしなみの基礎となる大切な持ち物にちがいない。
式典の会場ではプレスの効いた純白のハンカチが相応しい。人々が交わるパーティなどでは、予備のハンカチをポケットの奥へ忍ばせておき、咄嗟のとき相手に差し出す気遣いも忘れてはならない。細い綿糸を織り上げたローン素材や、同じく繊細な亜麻の素材は、ハンカチの中でも最も高貴な天然素材といえよう。
カジュアルな日常には、やはり吸水性の富む柔らかいコットン素材が良い。とりわけシャツ生地などを転用した柄物は、その日の着こなしを考え、さりげない洒落気分を楽しむ事もできる。好みのセンスを活かす絶好の小物でもある。
夏に限ってみれば、昨今人気を博しているのがタオル素材のハンカチ。フェイスタオルとして存在していた小さなパイル生地だが、寸法は畳めばポケットに収納できるほど小さくなっている。少し歩くだけでも吹き出す汗を拭うには、これが滅法便利なのだねえ。
ひとくちにハンカチと言っても、一把ひとからげにできない素材や柄がある。ただし、シワクチャのそれでは、何人たりとも格好が付きませんぞ。
絵と文・ふじたのぶお
by foujitas | 2008-08-08 16:18 | 洒落日記