同窓会
盆と正月。なかんずく休暇が長い夏の半ばには、各所で同窓会が催される。学年や学校単位の大がかりな会があれば、何とはなく学友が集って旧知を温める席もあり、巷では「おお、久しぶりじゃのう」と宴が盛り上がる。これが中年世代の同窓会になると感動もひとしお。男はみな、頭髪や腹周りを気にしながら、しかし杯を傾けては饒舌に過ごすのだった。
いつもの暮らしの中に居合わせない人と時間を共有する同窓会では、やはり着ていく衣服、その日の出で立ちが気になるもの。女性は慣れた手つきで程々の化粧をし、軽やかに着こなした洋服で参集するが、はたと困るのが中年男性である。普段着では忍びなく、さりとて一張羅というのも気恥ずかしい。さらには床屋へ行っておくべきではなかった、など日頃は頓着しない事柄まで気になって仕方がなく、内心は青春時代のようにソワソワと落ち着かないのだねえ。
男子諸兄。同窓会の奥義とは、まずもって「バリッ」と着こなすべし。くたびれた普段着で座ってしまっては、せっかく同席したあの娘の百年の恋も冷めるというもの。とりわけ穴の広がったベルトや、色褪せたソックスなどにはご用心召されよ。ン十年ぶりの彼女も、間違いなく青春の瞳をもって隣りへ座っているはずなのだから。
実をいうと明日はその同窓会にて、いまさら自戒する洋服屋なのだった。呵々。
絵と文・ふじたのぶお
by foujitas | 2009-08-07 12:42 | 洒落日記