ジャケブル
「ジャケブル」とか「シャツジャケ」とか、およそ何を指す言葉か想像さえ及ばない造語が、いまファッション業界に溢れている。十月は来春夏物の展示会シーズンで、先の台風を追いかけながら東京へ赴いたのだった。そこで見た半年先の洋服は、やはり昨今の傾向を引き継ぐキレイ系カジュアル路線だった。
企画部に所属するという若い男の説明は、まずメインステージへ飾られていたジャケットだった。パッドや芯地を用いず、やたらとステッチが目立つ細身で着丈の短い背広だ。彼は「これはジャケブルです」といって話し始めた。
要するに背広の格好は成しているが、ブルゾンのような簡素な縫い方で、素材も敢えて粗野なコットンを用いて作った洋服。ジャケットとブルゾンを足して「ジャケブル」と呼ぶという。
一方で「シャツジャケ」はシャツとジャケットの合いの子。本来は何某かの中へ着こなすべきシャツを、あたかもアウターウェアのように上着として着用する。よってシャツの裾はパンツの外へさらけ出し、前の釦も開け放つ。これをして彼は、今世風カジュアルの着こなしだと言って憚らない。
目新しい流行を意識するのは結構なことだけれども、着崩すことばかりに目を奪われている現代ファッションは何を目指しているのだろうか。
絵と文・ふじたのぶお
by foujitas | 2009-10-16 18:41 | 洒落日記