日本人の青色観

「青い山脈」といえば日本人が好む歌の上位に食い込む、昭和二十四年の名曲。歌詞の中には「青い山脈、緑の谷へ」と歌われる一節がある。間近で目にする森は緑色に見えるが、遠くに眺める山は青く映ったのだろう。それは誰にも異存なく受け容れられてきた。
青色は若々しい事、初々しい事を連想する色として捉えられている。青リンゴは色彩の観点に立てば明らかに緑色の一種だけれども、人々はをれを青いといった。
それでは緑色は如何かというと、たとえば「緑十字」は安全や衛生を表す色として認識されている。さらに信号機の「進め」の色は、よく見ると時代や地域によって青と緑の発色が混在していて興味深い。
戦後の時代に日本人は青と緑に対して寛大な感覚を持つようになった。これは大量に流入したアメリカ的な文化の影響による現象ではないだろうか。はなはだ大雑把な考察ではあるけれど、侘び寂びの感性が現実主義に移り変わった時代に重なるのである。
東部アメリカにはハーバード大学やエール大学など、アイビーリーグと呼ばれる優秀な学校の中にブラウン大学がある。アメリカ人が茶色に連想するのは「大地の恵み」または「健やかなこと」だという。ある英国の心理学者は、その茶色と紫色の組み合わせが「最も調和しない組み合わせ」と唱えている。長い歴史の中で風土として培われた色彩観は、お国柄によって異なるものだねえ。
絵と文・ふじたのぶお
by foujitas | 2010-01-29 17:19 | 洒落日記