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自動車のファッション観

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日本の自動車史は、まだ浅い。政府が打ち出した国民車構想により、五〇年代終盤になってスバル三六〇やパブリカが生み出され、ようやく日本のモータリゼーションは幕を開けた。まもなく東京オリンピックが開催され、全国の道路インフラは急速に拡充。高度経済成長の追い風を受け、日本の自動車は目を見張る進化を遂げたのだった。

自動車の流行やファッション性は、洋服と同じく世相と密接な関係を持っている。目覚ましい進化の過程では、自動車先進国の技術に追いつき追い越せ、と国民が一丸となってまい進した。より速く、より美しく、よりカッコイイことを羨望して、美しい自動車がきら星のごとく生み出された。ホンダS、フェアレディZなど、欧米でさえ震かんさせる自動車が日本人によって造られたのであるねえ。時代はまさにアイビーブームの真っ直中。

やがてバブル経済が泡のごとく日本を包む。それまで強いモノに憧れていた人々は、ソーシャルという摩訶不思議な言葉に酔いしれ、自動車は無意味に飾られた。ソアラは時代の申し子であった。

あえなく潰えたバブル景気の後には、返す波のように空前の不況が押し寄せた。エコが声高に叫ばれ、人々の関心は、かつてのスポーツカーとは対局に向いていまっている昨今。これが時代というものだけれども、あの低く構えた流線型の自動車で、ビートルズを聴きながら重たいハンドルをねじ伏せた日を忘れたくない。

絵と文・ふじたのぶお

by foujitas | 2010-02-12 17:21 | 洒落日記  

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