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ネクタイは不思議な紳士服

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エフエム山口の収録があって、大谷やすべえ氏と過ごした。男の服飾について話す機会に、ふとネクタイのことが頭に浮かんだのだった(放送は17日午後6時半)。当たり前に認めているが、思えば不可解な形であり、いったい何のために着用しているのだろうか。

ネックは首、タイは繋ぐという意味であるが、その起源には諸説がいわれる。古代人が首に巻いた飾り布、いや兵士の防寒具が決定打であると論争は絶えない。しかし今もなお、スーツを着こなす際には、必ずといって良いほど首に結びつけるのである。

事の起こりはさておき、男の服飾品の中にあって、最も色彩が豊かなモノであるにちがいない。赤や黄、青という原色であれ、黒やグレイなどのモノトーンまで、それは幅広く用いられる。柄もまた限りなく、そして洒落男たちは、そんな色柄の組み合わせに一喜一憂をし、悩ましくも楽しんでいるのだねえ。

キーワードはズバリ、地味なシャツとジャケットに派手なタイ。あるいは派手なシャツに地味なタイ。年齢が上がるほど傾向は顕著になる。細長い布の素材や色が、男の性格を物語るのだった。

絵と文・ふじたのぶお

# by foujitas | 2006-12-16 18:26 | 洒落日記

 

アスコットスカーフの粋

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ドレッシーに装う男の服飾品は限られている。シャツやジャケットの形はどれも似通っていて、色や柄も総じておとなしい。女性の服装に比べたら、とても乏しいものでしかないが、Vゾーンを彩るネックウェアだけはおおいなる楽しみなのである。

背広を着用して前立てのボタンをとめると、両衿に挟まれたV字の胸元が現れる。そこは唯一、男が着飾るために豊富な色や柄を組み合わせることが許された場所であり、実に、シャツやタイで社交的なメッセージを発信しているのだ。

ネックウェアといえば結び下げのタイが一般的だけれども、もう一つ、照れ臭く思いつつも使ってみたいと考えるスカーフ状のタイがある。アスコットスタイだ。

ドレスシャツのボタンを外して首へ直接結ぶそれは、少しエレガントで品格のある着こなしを主張する、クラシカルなアイテムである。色合いも華やかで、軟らかいタッチが洒落オヤジを楽しませてくれるにちがいない。

なぜならアスコットタイは、かの英国アスコット競馬場において、並みいる紳士が好んで着けた、第一級の粋にルーツを辿るのだからね。

絵と文・ふじたのぶお

# by foujitas | 2006-12-09 18:25 | 洒落日記

 

クリスマスを演じる男たち

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師走になった。忙しく過ごした一年が暮れようとする月に、ある男たちは、いつもよりもっと洒落ようと考えるのである。暖冬とはいえ今年もクリスマスがやってくるのだ。

女性の装いのように豊かな彩りが望めない男の着こなしは、一年を通して、おおよそ紺やグレイという濃い色合いが多く、そんなスーツ姿を「ネズミのようだ」と揶揄されることさえある。実はネズミの中にも個性的な細工がなされ、男たちのアイデンティティが物語られているのだけれども、惜しむらくは、さほどメッセージが伝わらないらしい。

しかし世の奥方様よ、ダンナの着こなしをじっくりご覧あれ。パーティや忘年会がラッシュとなる今月、彼らはひと味ちがう。ダークスーツはそのままでも、赤いストライプのシャツや、華のある色柄のタイを着用し、もしかするとクリスマスをモチーフにしたラペルピンをポケットに忍ばせる粋な男たちの姿が、きっとどこかにある。

なに、うちのダンナはセンスが無い。なれば内助の功、そっと揃えてあげなされ。「こんな照れ臭いもん、使えんわ」などと言いながらも、まんざらでもなく身につけるにちがいない。着こなし楽しむユーモアとセンスは、洒落オヤジのとっておきのクリスマスなのだよ。

絵と文・ふじたのぶお

# by foujitas | 2006-12-02 18:24 | 洒落日記

 

靴を磨く男の美学

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春夏物のアパレル展示会へ赴いた。都内で開催される展示発注会では大勢のバイヤーが集い、各々の店頭へ並べる品物を見定める。木枯らしが吹く街路から一歩、屋内へ立ち入ると、明るい洋服が軽やかに飾られていて、まずそのギャップに感覚を馴らすことから仕事は始まる。

アパレル業界へ身を置く者に、お洒落好きが多いことは想像に易いだろう。展示会場ではショップの店長やオウナーたちが、我こそ主役とばかりにプライドを賭けた独特の着こなしで火花を散らす。なかなか面白い風景だ。なかんずく彼らが靴に注ぐ情熱は相当なもので、みな美しく磨かれたドレスシューズを履いて闊歩するのだった。

さて、靴の手入れというと、靴墨でゴシゴシと擦ることを思い浮かべるが、実は磨くばかりでは寿命を縮めてしまう。水分と脂分のバランスを適正に保ってこそ、味わい深い年季をみせるのである。だから保湿と栄養を与えるクリームを用いるのが良い。

靴のケアは、どこか女性の素肌の手入れに似通っているのだね。男が靴を磨く美学には、はっは、けだし当然の理由があったという事か。

絵と文・ふじたのぶお

# by foujitas | 2006-11-25 18:23 | 洒落日記

 

男はベルトにご用心

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男の着こなしの中でベルトは、意外と軽くみられる場合が多い。お買い得品のパンツにはセットにされるなど、行き詰まるところオマケ的な感覚になっているのである。上等なスーツを着ても、脱いだパンツに付けられたままのベルトも少なくないだろう。

腰を締め付けてパンツが下がるのを防ぐと思われがちなベルトは、実は腰に提げる武具や道具のために生まれたモノだから、袴の腰ヒモとは意味が違う。したがって強く締めたらパンツのウェストにシワが寄り、ひどく格好の悪い着こなしになってしまうのだね。

武具の一種であるからには、本来、身につけるモノと同質な素材が好ましい。牛革の靴や鞄を持ったなら、すなわちベルトも同じような牛革。少なくとも色や素材感を揃える程度は必要な身嗜みといえる。

そういえば有名なファッション雑誌に、二つ穴のバックル(留め具)が掲載され、ときの洒落オヤジたちが嬉々として着用したそうだ。カジュアルな着こなしは、おおいに結構。しかしドレッシーな装いには、シンプルで上品な普通のバックルが良い。デザイナー諸氏のイニシャルを象ったモノも多いが、さて、英国紳士が好むだろうかねえ。

絵と文・ふじたのぶお

# by foujitas | 2006-11-18 18:21 | 洒落日記