ツイードのこと
冬になるとゴワゴワとした肌触りの羊毛織物が懐かしく思い出される。いまどきは何でも軽くて軟らかく、薄いことばかりが美徳とされ、伝統的に受け継がれてきた昔ながらツイード生地は少数派になってしまった。
ツイードは、スコットランドで発達した毛織物産地、ツイード川が語源だという。毛織物の多くは豊かな風合いと充分な強度が保てる綾織りが主流で、綾織りは古くからツイルと呼ばれていた。ツイード川流域で織り上がった反物を荷受けをした男は荷札に「ツイル」と書いたが、ヨーロッパ各地へ届けられた荷物は、男の文字が下手くそだったために英語綴りは誤って「ツイード」と読まれてしまい、すっかり定着してしまった。荷物を受け取った商人は、さぞかし納得していたのではないだろうかねえ。
さて。服地としてのツイードは、たとえばシャーロック・ホームズのディアストーカー(鳥打ち帽)に象徴されるように、英国カントリー調のスタイルには欠かすことのできない代表的な生地である。コート、パンツ、ジャケットなど、多様な衣服に採用され、世界各地で人気を博した。
良いツイードの見分け方を一つ。店の者に不審がられるかも知れぬけれども、ツイードの臭いをかいでみると良い。本物のツイードは羊毛が含んでいる油脂分の独特な香りがするのである。これこそが暖かさの秘訣なり。
絵と文・ふじたのぶお
# by foujitas | 2009-11-27 13:56 | 洒落日記